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2016 年度 実績報告書

中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造

研究課題

研究課題/領域番号 26284116
研究機関学習院大学

研究代表者

亀長 洋子  学習院大学, 文学部, 教授 (40317657)

研究分担者 飯田 巳貴  専修大学, 商学部, 准教授 (00553687)
西村 道也  福岡大学, 経済学部, 講師 (10599814)
宮崎 和夫  筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (40251318)
黒田 祐我  信州大学, 人文学部, 准教授 (50581823)
櫻井 康人  東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
堀井 優  同志社大学, 文学部, 准教授 (70399161)
佐藤 健太郎  北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80434372)
高田 良太  駒澤大学, 文学部, 准教授 (80632067)
澤井 一彰  関西大学, 文学部, 教授 (80635855)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード地中海世界 / イスタンブル文化圏 / コンスタンティノープル文化圏 / 交流 / イスラーム / キリスト教 / ビザンツ / ユダヤ人
研究実績の概要

・海外共同調査
・8月26日から29日まで、イスタンブル大学との国際ワークショップ、トルコ内での共同史資料調査を予定し準備も順調だったが、7月15日に発生したトルコでのクーデター未遂事件により同大学もトルコ内も混乱と危険を極め、外務省による渡航自粛勧告もあり、やむなくトルコ内での開催をを中止した。航空券も購入済であるゆえトルコ内を避け、本科研の研究過程で重要性が指摘されていたイスタンブル文化圏に属するマケドニアと北ギリシアの共同調査を、コーディネーターを務める澤井と高田の指導下で実行した。調査実施内容は以下の通り。
・8月18日-20日:マケドニア(澤井、西村がスコピエ、オフリド、ビトラ訪問。旧市街とモスクを調査)・8月20日-21日:高田によるテサロニキとヴェリア予備調査・8月22日-25日:北ギリシア(澤井、高田、西村がセレス、ドラマ、カヴァラ、クサンシ、コモティニ、アレクサンドルポリ、ディディモティホ訪問。モスク、民族学博物館、歴史博物館、城塞等を調査)・8月26日:ヴェリア(澤井、高田、西村、亀長がモスク、シナゴーグ、博物館等訪問)・8月27日-30日:テサロニキ(櫻井(8月27日)、高田(8月27日-28日)、亀長・堀井(8月27日-29日)、澤井・西村(8月27日-30日)、佐藤(8月28日-29日)が城塞、修道院、教会堂、モスク、ヴェネツィア人の塔、ハマム跡、ユダヤ博物館、マケドニア民族博物館、軍事博物館、考古学博物館、ビザンツ博物館等訪問)
・国内研究会の開催
2017年3月12日に学習院大学にて開催。今後の相談、文献紹介・回覧、近況報告、抜刷配布等の情報交換、黒田祐我の報告「アンダルスとアンダルシーアのはざまで揺れ動く近現代スペインの歴史解釈―ブラス・インファンテとサンチェス・アルボルノスを軸として―」、共同調査参加者による夏期共同調査報告を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

7月に起こったトルコでのクーデター未遂事件により外務省によるトルコへの渡航自粛勧告や開催先であるイスタンブル大学側の混乱があり、8月下旬に計画していたトルコ内でのワークショップと共同調査は実施できなかったが、ワークショップの代替は平成29年度に実施のめどがたち、共同調査については研究目的の変更なく対象地域をコンスタンティノープル(イスタンブル)の文化圏であるマケドニア・北ギリシアに広げて対応できた。この調査は非常に有意義で、これにより、同地域におけるコンスタンティノープル(イスタンブル)のもつ影響力の大きさを政治、軍事、行政、宗教など多方面において実感できた。今回の調査地域の多くにおいて、対西欧人を意識した城塞、キリスト教(カトリック、ギリシア正教の両方)とイスラームの対立の痕跡が残る宗教関係史跡、ユダヤ人の存在の重要性を示す各種の史跡や博物館での展示内容等が顕著に確認され、地中海世界の文明の交差路としての同地域の重要性を認識した。また本科研の目的の一つであるが、共同調査により、イスラーム、ビザンツ、西欧の各領域を専門とする地中海史研究者たちが、調査先で同じ史資料を目にしてもそれぞれ注目する点が異なることを実感し、各自の意見を交換して見識や判断の視角を拡大できたのは極めて大きな収穫であった。3月に実施した国内研究会での共同調査報告では、共同調査に参加できなかった本研究のメンバーにも、写真等による解説も交え調査の成果の重要点を伝えることができた。本年度の研究を経て、今後各研究者による歴史叙述の細部の表現に深みを増すと思われる。また同研究会では各自の個人研究の途中成果に関する情報交換のほか、黒田報告でのスペインの歴史叙述の歴史に関する報告に対して活発な質疑応答があり、歴史を論じることの重みや、時代の拘束の中で個々の歴史家が有する叙述意識について参加者は考察を深めることができた。

今後の研究の推進方策

今年度は3つの事業を予定している。(1)国内公開シンポジウムの実施:平成29年は研究当初より予定していた、研究成果を一般公開すべく国内公開シンポジウム「(仮題)中近世の東地中海世界における異民族の混淆」を開催する。東京以外にも成果を広めるべく、東北学院大学を会場として実施する。パネリストは堀井、高田、西村、コメンテーターは澤井、コーディネーターは櫻井が務める。現段階では12月9日の開催を予定している。(2)海外研究者の招聘と研究会の開催:中止となったトルコ内での国際ワークショップや共同調査で共同研究を行う予定であったトルコ人研究者のエミネ・キュチュック(Emine Kucuk)氏(イスタンブル・グラフィックアート美術館顧問。考古学・博物館学が専門)を3月に日本に招聘し、研究会で報告していただく。(3)海外個人研究調査:亀長洋子がイタリア国立ジェノヴァ古文書館等で所蔵しているペラ(コンスタンティノープル郊外)関係の史料収集のためにイタリアに渡欧予定である。
今後の研究の推進方策:平成28年度7月に勃発したトルコ内でのクーデター未遂事件により、当初予定していたトルコ内での共同調査と国際ワークショップを中止せざるを得なかった。共同調査の代替策としては昨年度対象地域を北ギリシアとマケドニアに変更して調査を行い、想定以上の有意義な調査を行うことができた。また、国際ワークショップの代替としては、本科研の予算内でトルコ人研究者との研究交流をはかるべく上記エミネ・キュチュック氏を招聘し、同氏の報告を含む研究会を実施する。上記の不可抗力のため実施できなかったトルコ内での国際ワークショップや共同調査を本科研終了後も開催すべく尽力することでメンバーは合意している。平成29年度のエミネ・キュチュック氏との研究交流も、長期的な共同調査を念頭においての日本人側の事前研究の要素を含む。

次年度使用額が生じた理由

イスタンブル大学との共同ワークショップ、トルコ内での共同史資料調査を8月下旬開催で予定し順調に準備を進めていたが、7月15日に発生したトルコでのクーデター未遂事件により、同大学もトルコ内も混乱と危険を極め、外務省による渡航自粛勧告もあり、やむなくトルコ内での開催をを中止した。代替案として関連地域であるマケドニア・北ギリシアでの調査を実施したが、中止せざるを得なかった国際ワークショップ関連の出費は予定とは異なる結果となった。諸事情で共同調査に参加できないメンバーもいた。また、最終年度の予算配分が少なめであり、充実した報告書作成のために最終年度まで予算の繰り越しの必要がある。また、本研究の充実や今後の話し合いの必要のために、最終年度にも研究会合を開くのが望ましいと考えられ、遠方の研究者の国内旅費を最終年度にも用意するために繰り越しの必要があると考えた結果である。

次年度使用額の使用計画

トルコでの国際ワークショップの中止の代替策として、日本にてトルコ人研究者と交流することを目的に、平成28年度までの配分予算を使用して、前述のエミネ・キュチュック氏をトルコから日本に招聘し、トルコ人研究者側からみた地中海世界の異文化接触に関する見解をメンバーが学ぶ予定であるが、その招聘費用(航空券代、宿泊代等)や研究会開催費用に次年度使用額を用いる。また国内公開シンポジウムの開催地が仙台に決定したため、同地への交通費の一部を次年度使用額から補填する。また、本科研2年目に実施の機会を逸し繰り越していた個人研究としての地中海域調査に次年度使用額を利用する予定である。充実した共同調査を実施したため、最終年度の報告書作成の予算を増額する必要もあり、最終年度への予算の繰り越しも予定している。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] 中世ジェノヴァ人の居留地ペラ  研究と史料2017

    • 著者名/発表者名
      亀長洋子
    • 雑誌名

      学習院大学文学部研究年報

      巻: 63 ページ: 27-45

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Survey of Historical Research on Natural Disasters in Early Modern Istanbul2017

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Sawai
    • 雑誌名

      Mediterranean World

      巻: 23 ページ: 155―161

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Changes in the Ottoman-Venetian Treaties in the Sixteenth and Seventeenth Centuries2017

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Horii
    • 雑誌名

      Mediterranean World

      巻: 23 ページ: 147-154

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 1571~1590年の聖地巡礼記に見るイスラーム観・ムスリム観・十字軍観―後期十字軍再考(9)―2017

    • 著者名/発表者名
      櫻井 康人
    • 雑誌名

      ヨーロッパ文化史研究

      巻: 18 ページ: 125―158

    • 査読あり
  • [雑誌論文] エルサレム巡礼史に関する補助的考察―フェルマーンの語るもの―2017

    • 著者名/発表者名
      櫻井 康人
    • 雑誌名

      東北学院大論集 歴史と文化(旧歴史学・地理学)

      巻: 55 ページ: 181―213

  • [雑誌論文] (書評)芝修身『古都トレド―異教徒・異民族共存の街』2017

    • 著者名/発表者名
      黒田祐我
    • 雑誌名

      西洋史学

      巻: 262 ページ: 86-88

  • [雑誌論文] 近世のヴェネツィア経済とアドリア海2017

    • 著者名/発表者名
      飯田 巳貴
    • 雑誌名

      日伊文化研究

      巻: 55 ページ: 28-39

  • [雑誌論文] Venetian Silk Textiles and Fashion Trends in the Ottoman Empire during the Early Modern Period2017

    • 著者名/発表者名
      Miki Iida
    • 雑誌名

      Mediterranean World

      巻: 23 ページ: 191-200

  • [雑誌論文] 封地分配の行方――中世後期クレタにおけるヴェネツィア人入植政策とギリシア人の反応2016

    • 著者名/発表者名
      高田 良太
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 946 ページ: 23-32

  • [雑誌論文] 回顧と展望:ロシア・ビザンツ2016

    • 著者名/発表者名
      西村道也
    • 雑誌名

      史学雑誌

      巻: 第125編第5号 ページ: 333-335

  • [雑誌論文] さまざまな「仲介者」が活躍する世界―中世イベリア半島2016

    • 著者名/発表者名
      黒田祐我
    • 雑誌名

      信大史学

      巻: 41 ページ: 1-33

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] アンダルスとアンダルシーアのはざまで揺れ動く近現代スペインの歴史解釈2017

    • 著者名/発表者名
      黒田祐我
    • 学会等名
      第19回拡大地中海史研究会
    • 発表場所
      学習院大学
    • 年月日
      2017-03-12
  • [学会発表] 8~12世紀のビザンツ帝国の貨幣と財政―『新旧税計算法』と10~11世紀の金貨操作を中心に―2017

    • 著者名/発表者名
      西村道也
    • 学会等名
      社会経済史学会九州部会・経営史学会西日本部会・1月例会
    • 発表場所
      福岡大学
    • 年月日
      2017-01-21
  • [学会発表] 東欧としてのオスマン朝と海―あるいは「海」としての大河―2016

    • 著者名/発表者名
      澤井一彰
    • 学会等名
      東欧史研究会
    • 発表場所
      世界史研究所
    • 年月日
      2016-11-20
    • 招待講演
  • [学会発表] The deluge of Istanbul in 1563: a flood without a big river2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Sawai
    • 学会等名
      Cities and disasters: urban adaptability and resilience in history
    • 発表場所
      Institute of Historical Research, London University
    • 年月日
      2016-11-04
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] スペイン王権治下のアメリカ『副王領』とイタリア諸王国2016

    • 著者名/発表者名
      宮﨑和夫
    • 学会等名
      スペイン史学会
    • 発表場所
      首都大学東京
    • 年月日
      2016-10-30
    • 招待講演
  • [学会発表] トルコの食文化とハラール認識―過去と現在―2016

    • 著者名/発表者名
      澤井一彰
    • 学会等名
      NPO法人日本トルコ交流協会
    • 発表場所
      ユヌス・レムレ インスティトゥート東京
    • 年月日
      2016-10-22
    • 招待講演
  • [学会発表] ビザンツ帝国の貨幣とその歴史―10~11世紀の金貨操作をてがかりに―2016

    • 著者名/発表者名
      西村道也
    • 学会等名
      第2回西ユーラシア貨幣史研究会
    • 発表場所
      京都女子大学
    • 年月日
      2016-09-18
  • [学会発表] 文明間をつなぐ仲介者―越境交渉の担い手からみる中世後期イベリア半島のアンダルシーア・ムルシア社会の断面2016

    • 著者名/発表者名
      黒田祐我
    • 学会等名
      2016年度第二回ヨーロッパ中世史研究会例会
    • 発表場所
      青山学院大学
    • 年月日
      2016-07-30
  • [学会発表] 「ものつくり」と水 ~近世イタリアの絹産業~2016

    • 著者名/発表者名
      飯田巳貴
    • 学会等名
      第48回地中海学会大会シンポジウム「地中海の水と文化」
    • 発表場所
      首都大学東京
    • 年月日
      2016-06-19
  • [図書] スペインの歴史を知るための50章( 中世のダイナミズム, 自治州国家の歴史的背景)2016

    • 著者名/発表者名
      黒田祐我(立石博高、福山佑子、久米順子、黒田祐我、内村俊太、中本香、菊池信彦、久木正雄、武藤祥、加藤伸吾、永田智成著)
    • 総ページ数
      396(46-97、324-328)
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] はじめて学ぶイタリアの文化と歴史(イタリアと地中海)2016

    • 著者名/発表者名
      飯田巳貴(藤内哲也編)
    • 総ページ数
      351(134-158)
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [図書] 16・17世紀の海商・海賊 アドリア海のウスコクと東シナ海の倭寇(16、17世紀のヴェネツィアとアドリア海の海外領土―経済的側面からの考察)2016

    • 著者名/発表者名
      飯田巳貴(越村勲編)
    • 総ページ数
      245(55-70)
    • 出版者
      彩流社
  • [図書] Marine Merchants & Pirates During the 16th and 17th Centuries, Uskok of the Adriatic Sea and Wako of the East China Sea(Venice and the stato da mar in the early modern period: An economical perspective)2016

    • 著者名/発表者名
      Miki Iida(Isao Koshimura ed.)
    • 総ページ数
      245(49-59)
    • 出版者
      Sairyusha
  • [図書] 環境に挑む歴史学 (気候変動とオスマン朝「小氷期」における気候の寒冷化を中心に)2016

    • 著者名/発表者名
      澤井 一彰(水島司編)
    • 総ページ数
      416(277-291)
    • 出版者
      勉誠出版

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公開日: 2018-01-16  

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