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2016 年度 実績報告書

古代東アジアにおける膠生産の研究

研究課題

研究課題/領域番号 26284121
研究機関奈良女子大学

研究代表者

宮路 淳子  奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (30403322)

研究分担者 中沢 隆  奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30175492)
河原 一樹  大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60585058)
丸野 孝浩  大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60648351)
舘野 和己  奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 特任教授 (70171725)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード考古学 / プロテオミクス / 動物考古学 / 膠生産 / 膠流通 / 古代東アジア
研究実績の概要

文献史料収集:古代東アジアにおける膠生産・使用・流通に関する文献を収集した。日本列島においては、推古期に墨の製法が伝えられていることから、膠も当該期に移入されたものと考えられてきた。『延喜式』等には墨の製法が記されており、膠の利用方法を知ることができる。しかし漆利用とともに、その利用と生産が皮革製品の生産とともに、もっと早い段階から行われてきた可能性が明らかになってきた。特にその生産が、特定の社会階層に担わされていた可能性を明らかにしつつある。一方、東アジアの他地域、特に中国北方部ならびにモンゴル地域、および中央アジアを横断する広範囲に渡り、遊牧民がその利用と流通の拡大に深く関与してきた可能性を明らかにしつつある。
タンパク質質量分析による解析:微量のタンパク質資料から、MALDI-TOF/TOF質量分析装置を用いて解析を可能にした。極微量資料の場合には、NanoLcをオンラインで結合したLC-ESI-LTQ質量分析によって解析が可能となることを明らかにしたが、この方法は外部の研究機関との共同研究によって進めた。これら2種類の分析法は異なるイオン化の原理に基づくため、両装置を使い分けることにより、より広範な資料の分析に対応できることを明らかにした。
動物遺存体の出土状況の精査:古代東アジアにおいて、膠は、記録媒体の道具である墨の原料であったとともに、像や寺院といった多様な宗教施設や活動においても、重要な材料であったことが、明らかになりつつある。膠生産の場が、都城内部から検出される状況は、その生産の重要性を示している。皮革生産の場と分かちがたい関係性を示していることは、また、生産従事者の社会階層を示す可能性も示している。
東アジア地域の調査:中国内モンゴル自治区ならびにモンゴルにおいて、膠関連資料の調査・収集を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

古代東アジアにおける膠生産・使用・流通に関する文献を収集し、特に中国北方部ならびにモンゴル地域、および中央アジアを横断する広範囲に渡り、遊牧民がその利用と流通の拡大に深く関与してきた可能性を明らかにしつつあることは成果として重要である。
コラーゲンを含む文化財資料の分析については、微量のタンパク質資料から、MALDI-TOF/TOF質量分析装置を用いて解析を可能にした。極微量資料の場合には、NanoLcをオンラインで結合したLC-ESI-LTQ質量分析によって解析が可能となることを明らかにしたが、この方法は外部の研究機関との共同研究によって進めた。これら2種類の分析法は異なるイオン化の原理に基づくため、両装置を使い分けることにより、より広範な資料の分析に対応できることを明らかにした。
動物遺存体の出土状況の精査によって、古代東アジアにおける膠生産の場が、都城内部から検出される状況は、その生産の重要性を示している。膠は、記録媒体の道具である墨の原料であったとともに、像や寺院といった多様な宗教施設や活動においても、重要な材料であったことが、明らかになりつつある。
中国内モンゴル自治区ならびにモンゴルにおける膠関連資料の調査・収集は、政情不安等と重なり当初の予定以上には進まなかった。

今後の研究の推進方策

最終年度となるため、研究の総括を行う。
東アジア地域の文献調査の成果を、原文の解題ならびに日本語訳の発表も含めて行い、膠生産・使用・流通に関する情報を共有できる形に整える。
タンパク質質量分析:資料の分析成果を公表する。
動物遺存体:遺跡からの出土状況により、東アジア地域においては、膠生産は墨原料として、また建造物の建築、美術工芸品の製作に必要欠かせざる物資であったことが明らかとなってきた。
これらの成果を精査し、国内外での学会等で成果発表を積極的に行うとともに、西アジアへの広がりも視野に入れていく。

次年度使用額が生じた理由

資料収集ならびにデータ入力等を依頼する予定であった人員が、年度途中に他機関に採用され、人件費について大幅な見直しが迫られたため

次年度使用額の使用計画

次年度は人員を当初より確保し、資料集ならびにデータ入力等の作業を迅速に進める計画である。

研究成果

(6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] カイコガの種でみる日本の古代養蚕史2017

    • 著者名/発表者名
      中沢隆
    • 雑誌名

      古代学

      巻: 9 ページ: 1-10

  • [雑誌論文] Mass spectrometry of collagen and casein in the remains of the 5th to 7th century Bamiyan Buddhas2016

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa, T., Kawahara, K., Fukakusa, S., Karino, M., Takashima, M., and Taniguchi, Y
    • 雑誌名

      Proceedingsof the 64th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics

      巻: MP ページ: 554

  • [雑誌論文] 文化財中の古代タンパク質分析の現状2016

    • 著者名/発表者名
      河原一樹
    • 雑誌名

      現代文明の基層としての古代西アジア文明Newsletter

      巻: 9 ページ: 71-74

  • [学会発表] Mass spectrometry of collagen and casein in the remains of the 5th to 7th century Bamiyan Buddhas2016

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa, T., Kawahara, K., Fukakusa, S., Karino, M., Takashima, M., and Taniguchi, Y
    • 学会等名
      64th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics
    • 発表場所
      サンアントニオ、アメリカ合衆国
    • 年月日
      2016-06-05 – 2016-06-10
  • [図書] 奈良女子大学所蔵資料 写真乾板(2)2017

    • 著者名/発表者名
      宮路淳子
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      奈良女子大学記念館
  • [図書] 奈良女子大学所蔵資料 写真乾板(3)2017

    • 著者名/発表者名
      宮路淳子
    • 総ページ数
      203
    • 出版者
      奈良女子大学記念館

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公開日: 2018-01-16  

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