研究計画書に記した先住民族による合同研究会を継続的に実施するため、1回の研究会と2回の研究合宿を開催し、合宿の内の一つは国際合宿とした。中には、先住民族出身の文化伝承者・実践者が共同で研究に取り組む際の独特のコミュニケーション方法に関し、平成28年度末の国際研究会でたてた仮説を再確認できたことにより、先住民族の「知」の伝承のメカニズムに関する斬新なデータを産出したといえる。つまり、口承文化である先住民族の独特な「知」の表し方、「知」の活用法はしばしば物語の形を取り、聞き手を惹きつける魅力的な語り方により、効果的な知の共有を行え、頻繁に困難に立ち向かえ、それを乗り越えなければならない先住民族にとってバイタリティの源の一となる。この研究成果は報告書『北海道における先住民族の「知」の接合に関するアクションリサーチ研究ー報告書-』という報告書に「渋谷ストーリー」という概念で盛り込まれた。また、報告書の編集作成が、アイヌ民族の研究協力者との共同作業によって行われたことが画期的であるといえる。近い将来に様々な場での発表、論文投稿により発表をする予定である。 2017年3月1日~2日にフィンランドで開かれた、ヘルシンキ大学と北海道大学による合同の国際会議において、ゲーマンは当調査研究プロジェクトおよびその研究方法論について発表をしたところ、発表を聞いた人たちから賞賛のコメントをいただくとともに、SNSフェースブックで国際的な評価を受けた。 28年度の業績のもう一つとして、2016年7月14日にゲーマンらが開催した先住民族の遺骨返還に関する国際シンポジウムがある。このシンポジウムでは、当調査研究プロジェクトのボブ・サム氏、その他研究会に参加したことがある札幌在住のアイヌ民族が演壇に上がった。科研の独自開催ではなかったが、科研研究会での連続線上にあったころで科研の連携が活かされたと言えよう。
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