研究課題/領域番号 |
26284138
|
研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
島田 将喜 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (10447922)
|
研究分担者 |
中村 美知夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30322647)
大石 高典 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 講師 (30528724)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 遊び / 社会ネットワーク分析 / ホモルーデンス / 子ども / トングウェ / チンパンジー / ニホンザル / 認知心理学実験 |
研究実績の概要 |
島田(研究代表者)は、「毛づくろい=遊び仮説」に関する英語論文を刊行した。また、遊び論と認知科学や意味論との融合を試みる論文を刊行した。複数の招待講演、国内学会に参加し、研究成果の公表に努めた。一方で、野生ニホンザルを対象とした遊び行動、毛づくろい行動に関するデータ収集を、宮城県金華山、東京都奥多摩で継続し、また野生チンパンジーを対象とした遊び行動に関する研究を継続した。マハレのチンパンジーの対物遊び行動の発達が、マハレのチンパンジーの物質文化にどのような影響を与えるか、に関する研究成果を英語論文化して出版するため、データの分析に着手し、成果に関する学会発表を行った。タンザニア・マハレへの渡航には、髙橋(連携研究者)を伴い、近隣のカトゥンビ村に短期間滞在し、髙橋のフィールドでの実験の立ち上げをサポートし、髙橋帰国後には現地での認知心理学実験を追加で行った。 中村(研究分担者)はタンザニア・マハレ山塊国立公園における野生チンパンジーを対象としたフィールドワークを持続させ、遊びと毛づくろい行動に関するデータ収集を行った。 大石(研究分担者)は、カメルーンにおけるバカやバクウェレの子どもの遊びに関するデータ収集を行った。また高橋の作成した実験プログラムを実装したタブレット端末を用いて実験研究を行った。 髙橋(連携研究者)は、タンザニア、カメルーンそしてその他の国々での認知心理学実験を同一のタブレットを用いて行えるようにするため、実験プログラムの開発を行った。また島田とともにタンザニア・マハレ周辺域を訪問し、実験を行った。訪問先の多くの国々で紙に「笑顔」を描いてもらう実験を予備的に行い、これまでの実験成果と考え合わせて興味深い実験であることが判明したため、今後の実験計画を策定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遊びに関する研究成果の論文化、異分野との共同研究、など当初目標としていた課題をすべてクリアしており、さらに主たる研究目的の副産物としての成果も複数得ることができた。ストラスブール大のスール博士の研究室の訪問だけが、計画通り実現できなかったが、29年度は成果を論文化する際にメールでの議論を行うことで十分にカバーできた。 実際、ストラスブール大のPele博士、スール博士らとの共著論文(Pele, et al. 2017 Primates)は、日本霊長類学会から、Primates Social Impact Award 2017を受賞した。また高橋らとの共著論文(Takahashi, et al. 2017 Journal of Cross-Cultural Psychology)もまた、世界中で高い評価を受けた。 研究代表者も研究成果に関する複数の論文を出版できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまで本科研においては連携研究者の立場だった髙橋氏を、分担研究者とし、高橋の研究の自由度を上げ、実験的研究を主導してもらうことにした。昨年度までに公表した比較実験の成果と考え合わせると、本科研にとって、髙橋氏にはより自由に研究活動を行ってもらい、実験的研究に関してはその他のメンバーを統括してもらうことが効率的であると考えた。 ヒト(およびいくつかの種)において、他者の「笑顔」の認知は、遊びの成立そのものを左右する重要な機能をもつ。本科研のテーマである「遊び」を成立させる笑顔について、さまざまなフィールドで現地の方々に「笑顔を紙に書いてください」とおねがいするいう、きわめて単純な手法で収集されたプレリミナリーなデータ分析を行った結果、笑顔に関する認知は、ヒトにおいて相当大きな文化差が見出される可能性が示唆された。今後、これまでに本科研で培ってきた異分野融合のネットワークを利用して、笑顔の認知に関する研究を本格化させる見込みである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は受け入れ先(フランス)と研究代表者(島田)の間の日程調整がつかず、島田のフランス渡航が実現できなかった。その分の渡航費用を繰り越し、2018年度にはフランス渡航を実現させ、研究打ち合わせや将来の日仏での共同研究について検討する。
|