研究課題/領域番号 |
26285001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00233510)
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研究分担者 |
濱野 亮 立教大学, 法学部, 教授 (80267385)
宇田川 幸則 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80298835)
高橋 裕 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (40282587)
池田 公博 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (70302643)
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 教授 (70330008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多文化主義 / 法文化 / 司法通訳 / マイノリティ / 法批判 |
研究実績の概要 |
平成26年7月に立教大学で第1回全体会合を行い、本研究の問題関心、理論枠組み、実態調査計画(年度内に予定している台湾とベルギーにおける予備調査)について協議を行った。 これをふまえて各班ごとに文献調査、理論的検討を進めた上で、平成26年12月に同じく立教大学で、スペイン語のプロ通訳であり法廷通訳に関する言語人類学の博士論文を書き上げたばかりの吉田理加氏を招聘して研究会合を行った。メタ語用作用(とりわけ発話を発話者の帰属する文化の社会文化的コンテクストから一旦脱コンテクスト化したうえであらためて翻訳に再コンテクスト化する過程)に注目する最新の研究成果に触れ、法廷における文化衝突という本科研のテーマが、実際の法廷においてアクチュアルな問題であると同時に言語学的アプローチが極めて有用な視座を与えることを確認した。同時に、通俗的な法(廷)批判に短絡しないように、慎重に実証的研究を積み重ねる必要性が再確認された。 平成27年度に予定する本調査の予備調査として、平成27年2月に台湾で、3月にベルギーで、それぞれ実態調査を行った。台湾では原住民や新移民が当事者となる裁判について法廷通訳、弁護士、裁判官、NPOなどに広くインタビューを行った他、高雄市の地方裁判所において原住民集団が起こした国賠訴訟の法廷を傍聴することができた。ベルギーでは、研究協力者のVanoverbeke教授とともにアントワープ市の重罪院における陪審裁判を傍聴し、キリスト教的バックグラウンドが明らかな法廷壁画が持つ意味について意見交換を行ったが、依然として同国の司法関係者がこの問題について十分に意識していないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
法廷における異文化衝突が日本の法廷においても多様な難問をもたらしているアクチュアルな問題であること、とりわけ言語と文化に関わる問題が重要であること、を、まずは法廷通訳という仕組みを通じて確認することができた。 また、27年度に予定する国内調査の予備として台湾とベルギーにおける予備調査を無事終えることができた。特に台湾では、裁判官、弁護士、検察官、法廷通訳、原住民、新移民、研究者といった人達の協力を得ることができ、日本以上に法廷における文化衝突の問題に直面している同国の状況をつぶさに観察することができ、27年度以降の研究の重要な基盤を提供してくれることになった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成26年度)の文献調査と予備調査(台湾/ベルギー)の成果を最初の全体研究会で確認した上で、「法文化班」と「法批判班」のメンバーが中心となって東京と名古屋における本格的な調査に着手する。具体的には東京と名古屋の地裁における実態調査、両地の弁護士会および(社団法人)日本司法通訳士連合会、(NPO法人)東京国際人権協会等におけるアンケート調査を併用した参与観察とインタビューを重点的に行う。 日本の法廷における当事者のやり取りの調査を行うにあたって、台湾におけるような裁判所や当事者の全面協力が得られるかどうか多少の危惧がある。純粋に学術的な調査であっても、裁判所からも当事者からも警戒されるのが日本の常だからである。外国人や移民を当事者とする訴訟に通じた弁護士(法律事務所)および法廷通訳の協力を確保することから地道に進めることにする。 調査分析をふまえ、「法廷における異文化衝突の言語分析:中間総括」と題して、Dimitri Vanoverbeke教授(KU Leuven)、王泰升教授(国立台湾大学)、黄居正教授(国立清華大学)を招聘して国際シンポジウムを開催する。 国内調査および国際シンポジウムの準備と総括を行うため、国内における研究会合を定期的に開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究費に関しては182,228円の残額が生じた。これは台湾における調査に参加予定だった分担者1名(宇田川)が、本務校の公務のためやむなく参加を断念した結果旅費が余ったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の残額については27年度の交付額と併せて、27年度に予定している東京と名古屋での国内調査のための旅費、資料代、謝金等として効率的に使用する計画である。
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