研究課題/領域番号 |
26285006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 匡彦 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80251437)
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研究分担者 |
斎藤 誠 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00186959)
磯部 哲 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (00337453)
飯島 淳子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00372285)
岩村 正彦 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60125995)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 行政法 / 社会保障法 / 地方自治 / 機能自治 / 医療保険 / 医療供給体制 |
研究実績の概要 |
本年度は、第1に、地方公共団体の行う事務の特質を探る方向での研究が行われた。一つは、現行法に照らして明らかにする研究であり、これにより、空間管理の観点が地方公共団体に固有の事務として浮かび上がった。今一つは、日本国憲法の制定時に関わった者の理解を探る研究であり、そこでは、自治において処理される事務への期待とそれが対象との距離の近さ故に歪むことへの危惧が早い時期から示されていたことが明らかとなった。加えて、地方公共団体における財産管理、特に債権管理に関してその放棄のあり方が検討された。 第2に、社会保障における機能自治の前提状況を確認する作業として、高齢化の進む日本における社会保障政策のあり方に関して、改めて研究を行った。一つは、社会保障全般について検討する形で行われ、その中で、医療保険の抱える問題が、高齢者医療のファイナンスの問題を通して再検討された。また、従来の社会保障政策が将来の政策のあり方を拘束することの原因とその限界、その拘束解除のあり方に関する研究が行われた。この研究は、直接には老齢年金との関わりで検討されたが、医療保障政策についても応用の効くものであり、今後の検討において指針を与えよう。加えて、昨年に行われた国民健康保険法改正の特色・予想される帰結に関する検討も行われ、国民健康保険の都道府県と市町村の共同運営という基本方針とそれを実現するための特色が、1999年の地方分権改革以降の基本的な制度との抵触を避けられるように構築されつつも、異質な要素が取り込まれていることが明らかにされるとともに、今後の人口減少の中で、一定のモデルを提供しうるものとなりえること、このことに伴う都道府県と市町村の関係の変容が予想され、この点への注視が必要なことが把握された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地方自治と機能自治を比較したときのお互いの特質、現代の社会における社会保障の問題状況、その中で地方自治・機能自治の果たしうる役割への考察は概ね予定通り進展している。他方で、ドイツやフランスにおける対応する問題状況や、前提となる諸制度の分析はなされているものの、なお論文として公表するには至っていない。しかし、比較法研究の知見は、日本法に関する特色の把握に際して、前提たる基盤として機能しており、概ね期待通りの進展を見ていると評価して良かろう。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、現在把握されている制度の特色を押さえ、評価するための理論的な反省作業を行いたいと考えている。とりわけ機能自治においても処理しうる事務と地方自治でなくては処理しえない事務の性質の違いが一つの手掛かりを与えるであろう。もっとも、当初予定していた基本権や民主政原理からの分析という視角との統合をいかに行うかの問題が生じており、この部分への研究が優先されることになるかもしれない。また、以上の諸作業が、これが外国法との比較研究という形で公表されるか、日本法に関する分析として示されるかは、各研究分担者の選択に委ねられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外旅費として割り当てた予算が、スケジュールの都合上、来年度に延期にせざるをえなくなった、あるいは発注した資料が予定通りに出版されなかったなどが主たる理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
延期された海外出張を行い、また資料の入手を急ぐなど、使用計画に従った執行を行う。
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