研究課題/領域番号 |
26285024
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高橋 満彦 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
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研究分担者 |
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境政策 / 生態系管理 / 野生動物管理 / 狩猟 / 鳥獣保護法 / 所有権 |
研究実績の概要 |
まず本年度は初年度のため、5月に研究組織の全体会議を開催し、研究実施計画を確認した。 【文献調査】鳥獣保護法をはじめとする野生動物法制と土地の私的所有制度との相互関係を中心に行った。成果は本年度中に国内雑誌2本の発表したが、特に本年度は鳥獣保護法の改正があったため、法改正に関する論考を発表することができた。今後も執筆と発表を継続する。 【現地調査】①国内では北陸、東北の狩猟者集団の調査を行い、猟友会の活動の参与観察を行った。伝統的狩猟者が集まる「マタギサミット」においてもヒアリング調査を行った。希少種の保全に関しても、北海道において国内希少野生動植物種の保全現場において調査を行い、課題を抽出することができた。 ②海外調査は、天然資源にかかわる法制の改編期にあるケニアにおいて現地調査を行い、資源配分を巡る利害の衝突と調整や、原則として捕獲禁止となっている鳥獣の管理や被害対策について調査した。また、米国アイオア州においても、他の研究課題における調査と並行して、草原性の野生生物資源の管理に関する調査を行った。 【研究会の開催】①種の保存法の検討を中心とする「希少種保全研究会」を全国的な環境NGOの方々を集めて東京で開催した。講演者は連携研究者畠山武道で、米国種の保存法をテーマに行った。②富山大学において、豪州カーティン大学Guy Charlton教授による構造主義を分析に用いた先住民族と天然資源管理に関する研究会と、ナイロビの国連環境計画上級職員の大賀敏子氏を講師に、アフリカの天然資源をめぐる情勢に関する研究会を行った。 【狩猟者の意識調査】これは東日本を中心とする狩猟者約2万人を対象に別予算で行ったアンケート調査だが、本研究課題で分析を行っている。本年度でほぼ分析を終え、国際学会で発表を行った(上田・高橋)。さらに国際誌投稿に向けて準備中であり、27年度投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究初年度であったが、複数の論文の発表と学会発表を行うことができた。また、調査も国内海外ともにほぼ計画以上に行うことができた。課題としては、研究組織内の相互コミュニケーションに関しては課題が残った。また、狩猟を中心に最近は議論が活発化しているため、研究成果の分析と成果発表にもう少しスピード感が持った方がより社会貢献度を増すと感じた。
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今後の研究の推進方策 |
【文献調査】海外文献、特に米国判例に力点を置く。また、日本の狩猟法制に関しては、小柳泰治著『我が国の狩猟法制-殺生禁断と乱場』が上梓されたため、本研究課題で行っている法制史的資料の発掘と発表に関して新奇性が減殺するおそれは否めないが、同書の論旨には疑問も多く、分析を進め、現場感覚のある成果を発表したい。 【現地調査】①国内調査は、各研究者が地元のモニタリング(北陸(高橋)、東北(田口)、北海道(伊吾田、早矢仕)を行い、特に春のクマ狩り(猟期外の特別許可)の参与観察を行う。本年は毒流しなどの禁止漁法についても情報収集したい。また、この数十年ぶりに新しく猟区を開設した北海道西興部村または占冠村で猟区制度と土地所有に関する調査を行いたい。鳥獣法上、猟区を開設するには全地権者の承諾が必要であり、猟区制度活用の障壁となっていることが考えられる。 ②海外調査は、米国において天然資源の公益信託に関する学会に出席を含めた調査を行うほか、ドイツの猟区制度の調査実施を検討する。なお、ケニアにおける調査継続の必要性も高いが、27年度は治安上難しいと考える。 【研究会等】①野生動物管理に関して、田口が主宰するマタギサミットで、東北を中心とする伝統的狩猟者の意見を聴取する。②希少種保全については、引き続き「絶滅危惧種保全研究会」を年2回ほど開催し、環境NGOや行政担当者と意見交換の場を持ちたい(草刈・高橋)。③研究チーム関係者の研究会を年2回程度開きたい。テーマとしては、改正鳥獣法などが予想される。 【成果の中間発表】中間的成果の発表として、国内雑誌と学会発表を各々複数行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度への繰越額は、当該年度所要額(B)の1割未満であり、他予算の活用を含めた経費節減のためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(繰越額)は次年度の所要額の1割弱であるため、所要額と合わせて、主として分担研究者の研究に活用する予定である。
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