研究課題
最終年度に当たる本年度は、各自の研究成果をとりまとめ、著書の形で発表することに取り組んだ。九州大学法政学会に刊行助成を申請し、助成額上限の100万円の助成を得ることができた。出版は風行社に依頼し引き受けてもらうことになった。2019年1月末までに版組と校正が完了し、2月20日に『政治リテラシーを考える――市民教育と政治思想』(全288頁)のタイトルで公刊となった。この編著の第1章の関口論文は、政治リテラシーの概念を整理した上で、クリックが提唱した政治リテラシー教育における概念アプローチを、実践面と理論面の双方から批判的に検討し、改良の可能性を示している。第2章の施論文では、市民を孤立した形で捉えるのではなく関係の網の目という見方から捉え直す視点から、主権者教育における責任や義務の扱い方が検討されている。第3章の蓮見論文では、近年のイギリスにおけるシティズンシップ教育論の見直しの動向が、「徳論なき市民的共和主義」の可能性という観点から検討されている。第4章の石田論文では、対比・対立という観点で捉えられがちなリップマンとデューイを、公衆の政治教育という両者に共通の関心から捉え直すことが試みられている。第5章の竹島論文は、ブルクハルトの市民型教養の捉え方に、バランス感覚という政治リテラシーに必須の要素が取り入れられている点を明らかにしている。第6章の井柳論文は、マシュー・アーノルドを取り上げ、アーノルドがデモクラシーの必要性を認めつつ、政治と一線を画しながら政治の質を左右する人文的教養のあり方を追求したことを明らかしている。第7章の平石論文では、リンゼイによる市民教育の取組が、専門化の進行と欲求の肥大化という現代社会の二大問題への対処であったことが解明されている。最後に、第8章の鏑木論文では、宗教と政治リテラシーの関係という重要な観点から、ニーバーの思想が分析されている。
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法政研究
巻: 85 ページ: 309-328
宮城教育大学紀要
巻: 53 ページ: 95-103
成蹊法学
巻: 88 ページ: 327-348
巻: 89 ページ: 206-224