研究課題/領域番号 |
26285037
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
波多野 澄雄 筑波大学, 名誉教授 (00208521)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サンフランシスコ講和 / 日韓国交正常化 / 歴史問題 / 賠償問題 / 戦後日本外交 |
研究実績の概要 |
27年度は、前年度までの成果の一部を、論文(「戦後外交における歴史問題―「請求権」をめぐる攻防」『外交』32号)として発表するとともに、「サンフランシスコ講和体制と日韓関係」と題して国内の招待講演(日本政治学会・韓国政治学会合同国際シンポジウム、北海道大学)及び韓国の外交安保学院(ソウル)において発表した。韓国では、外交安保学院および啓明大学校国際学大学の研究者と日韓国交正常化の過程、および日韓条約、日韓請求権・経済協力協定(1965年)に関する研究動向について有意義な意見交換と情報収集を行った。とくに請求権問題では、日韓両国政府や司法部門における解釈や対応の相違、交渉プロセスにおける問題点について深く認識することができた。また、台湾においても中央研究院近代史研究所の研究者と日華平和条約(1952年)について、その交渉過程やサンフランシスコ平和条約との関連について意見交換と関連史料の収集を行った。これらの成果の一部はおよび招待口頭発表の内容に取り入れた。 中国については、研究員の柳英武さんに北京の档案館における対日講和関係史料の調査を依頼したが、閲覧制限があり十分な成果を得られなかった。ただし、代表者は中国出張のおり、北京大学国際関係学院や中国社会科学院近代史研究所の研究者より賠償問題や戦犯問題等について有益な関係史料や情報を得ることができた。なお、関連研究として終戦決定のプロセスの見直しを行い、単著『戦時宰相・鈴木貫太郎の決断』として発表した。また、戦時の日中、日ソ関係について、最近の日本における日中戦争研究の動向を英文レビューとして発表し、終戦時の対ソ関係についても新史料を用いた論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の分析対象は以下の3点である。(1)賠償問題の中軸をなす「請求権」という観点から「分離地域」(旧植民地)であった韓国・台湾及び東南アジア諸国の扱いの比較、(2)東京裁判を含む国際軍事裁判の講和体制における位置づけ、(3)上記2課題の分析を踏まえた、日米関係の懸案としての賠償問題(経済協力問題)と戦犯問題の処理過程の分析。 以上の3課題のうち、(1)については、韓国および台湾について海外の関連研究者との交流によって史料収集や研究動向の把握に大きな成果が得られた。ただし、中国(中華人民共和国)の対応については関係史料の公開制限等からやや遅れ気味である。(2)についても、日本外務省が公開した大量の戦犯関係資料の分析が順調に進んでいる。(3)については、賠償問題および在外財産問題に関する外務省資料の分析を進めつつある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる28年度は、前半において、前年度までの関係資料の調査の補足的調査と分析を進め、後半において研究全体のとりまとめを行う。 1.前半期においては、補足的調査として、前年度に新たに公開された終戦後の在外財産処理に関する資料、1950年代の経済協力に関する資料の分析を進める。また、連合国側の請求権や戦後処理に関する研究を踏まえ、アジア太平洋の地域秩序と安全保障システムの形成という観点から、とくに米国を中心に再検討を行う。 2.後半期においては、研究目的に従い、以下について研究報告をまとめる。 (1)賠償問題の中軸をなす「請求権」という観点から「分離地域」(旧植民地)であった韓国・台湾及び東南アジア諸国の扱いの比較、(2)東京裁判を含む国際軍事裁判の講和体制における位置づけ、(3)上記2課題の分析を踏まえた、日米関係の懸案としての賠償問題(経済協力問題)と戦犯問題の処理過程の分析。最終的には、アジア太平洋の地域秩序と安全保障システムを抱合する外交的枠組としての講和体制という観点から、その構造と特徴を今日の「歴史問題」との関連で明らかにするよう努める。なお、韓国について公開資料の調査分析を今少し深める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国の档案館(史料館)における閲覧制限等のため海外調査が十分に実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
中国における一次史料の収集(または研究文献等の収集)に引き続き努力するとともに、2014(平成26)年から新たに公開されつつある日本外務省および国立公文書館の大量の関係資料の収集と分析を進める。また、研究協力者および海外研究者を招いて研究集会の開催を積極的に実施する。
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