本研究の目的は、サンフランシスコ講和体制を、対日平和条約を基点に、アジア諸国との一連の平和条約・賠償協定および植民地帝国の清算を含む「政府間和解」の体制ととらえ、その構造を明らかにすることにあった。研究の結果、政府間の公的和解は、日本国内や近隣諸国の市民社会に受容と反発の両面を生み出したことを明らかにした。さらに、賠償問題の中心的テーマであった請求権という問題は、アジア太平洋の国際システムとしての講和体制(政府間和解)の安定と定着という観点から処理されてきたことを明らかにした。とくに、関係国の安全保障の確保、国内政治経済の改革という3問題と密接に関連しつつ展開した。
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