研究課題/領域番号 |
26285043
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石川 竜一郎 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80345454)
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研究分担者 |
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 認識 / 長期契約 / 資産価格 / バブル / 経済実験 |
研究実績の概要 |
当該プロジェクトの研究テーマを遂行するにあたり、研究計画に沿って理論分析と実験分析を並行して行った。 理論分析においては、研究代表者は米国カルフォルニア大学デービス校経済学部に長期滞在し、そこでの共同研究を通じて、認識(特に起こりうる状態に「気づいていない」こと)がもたらす長期取引の意思決定分析を行った。そこでは、一方が気づいていないことが長期取引を通じて他方がどのように顕示するか、またその際の合理的意思決定とは何かを分析した。 特に焦点を当てたのは、長期的に保有可能な耐久財の契約の問題である。同じ財を保有するための契約の形態(購入するかレンタルするか)が、気づいていないことを(帰納的に)学習する過程でどのように影響するかを分析した。結論として、レンタル契約は財を保有する企業にとって、消費者から知らない情報を引き出すことを容易にし、高い利益をもたらすことを示した。 これに関連して資産取引実験では、知らないことを推論する被験者の能力がどのように取引に影響を与えるかを分析した。被験者の推論能力を測るためにRavenテストを実施し、その結果に応じてグループ分けを行った。結論として、被験者個人の推論能力よりも、同じ取引グループにどれほど多様な被験者が存在しているかの情報が、資産価格バブルの発生に大きく関わることを見いだした。この結果は必ずしも頑強なものでないために、次年度以降の追実験を通じてより精緻な結論を得たいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は理論と実験ともに研究を進めることができ、予定通りの進捗と考えることができる。理論分析においては、長期契約を通じた帰納的学習を分析するために、取引する財を耐久財とすることで、契約の違いを通じて認識の相違がどのように埋められるかを比較・分析可能なモデルを構築している。 実験では、結果の頑健性を検証するためにより多くの追実験を行いたかったが、必要人数の被験者を集める点において困難な部分があったため、次年度以降の課題として残った。しかし一方で、今年度行った実験から、推論能力の多様性が個々の能力よりも資産価格に大きな影響を与える結果が観察でき、今後の実験契約がたてやすくなったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は理論分析に関しては、資産取引実験との関係を見極めるために、資産取引モデルにおける認識の役割を分析する理論が必要となる。しかし、本質的には耐久財取引と大きな違いはないため、計画通り進めていけると考えている。 また実験については、実験結果の頑健性を検証するための追実験が必須となる。これについては次年度以降に新入生も入学することから被験者雇用の問題はないと考えている。 本研究プロジェクトを発展させるためには、理論と実験を融合する「行動モデル」の構築が必須であり、今後はその構築にシフトしていくことになる。行動モデルを構築することで、実験データを異なる視点から分析のために用いることが可能になり、被験者の意思決定と行動データの対応を説明することが可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた経済実験で、被験者を集めることができず延期することにしたため、未使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に行うこととした経済実験のための、被験者実験謝金に用いる予定である。
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