研究課題/領域番号 |
26285043
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (80345454)
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研究分担者 |
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金融政策 / 量的緩和 / 高次認識 / 資産取引実験 / バブル / 資産価格 |
研究実績の概要 |
本年度は、追実験及び実験の金融政策への応用について考察した。追実験としては、Raven testを用いた認識能力に関するスコアを用いて被験者を分類し、スコアに応じて資産価格がどのように影響を受けるかということをさらに検証した。この追実験の目的は、市場の構成員(被験者)が自分以外の被験者のtestのスコアを知っているか否かで取引行動やバブルの大きさに影響が出るかを検証するためである。結果、被験者が市場構成員の論理能力を知っている場合と知らない場合で統計的に有意な結果の差を認められなかった。この結果から、資産価格は十分に構成員の能力を反映させるほどの情報伝達機能があり、被験者も資産価格の変化に応じて他者の能力に関する情報にかかわらず、適応的に取引を行うことが検証できた。 新たな実験として、非伝統的金融政策の中で量的緩和に関する検証を被験者実験を通じて行った。この実験では、資産として国債を想定し、中央銀行が介入する可能性がある債券市場において、介入が債券価格にどのような影響を及ぼすかを検証した。そのために、(1)介入がある場合(2)買いオペのみの介入が行われる場合(3)買いオペと売りオペの両方が行われる場合の3ケースの実験を行った。その結果、買いオペのみの方が、買いオペ及び売りオペの両方が行われるよりも、介入の影響を長く保つことができることが観察された。またその介入により、債券価格はその現在価値よりも高い価格で取引されることもわかった。これらの結果から、中央銀行がしばしば言及する期待に働きかける政策としては有効であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、これまでの実験結果をさらに深く追究するために追実験をおこない、概ね計画通りに進められた。また、新たに取り組んだ金融政策に関する実験においても、量的緩和政策の有効性が予想以上に明確に観察され、当初掲げた仮説が支持された。そのため、実験を追加する必要がなくなり、最終年度に向けた結果の集約を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
実験について概ね順調に進められたため、最終年度の前半で計画された実験を全て終わらせることが可能であると考えている。こうした実験結果を説明する行動モデルの構築及び理論的研究(モデルの構築)などが最終年度の課題になる。特に、帰納的推論を通じて特に将来に関する予想に関するモデルを、意思決定の立場からどのように捉えることできるかを深く考察する必要がある。このような研究を進めることで、実験結果を用いた行動モデル、上記理論分析の接合を図り、当初計画の実験・行動モデル・理論分析という一貫した研究成果を完成させる。
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