研究課題/領域番号 |
26285045
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
|
研究分担者 |
山邑 紘史 北星学園大学, 経済学部, 講師 (00610297)
河崎 亮 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20579619)
松井 知己 東京工業大学, 工学院, 教授 (30270888)
武藤 滋夫 東京理科大学, 経営学部, 教授 (50126330)
船木 由喜彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50181433)
中丸 麻由子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70324332)
下村 研一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90252527)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ゲーム理論 / 実験経済学 / メカニズム・デザイン |
研究実績の概要 |
外部性の存在する経済におけるメカニズム・デザインに関して、理論・実験研究を行った。従来の理論研究では、メカニズムがすでに形成されていることを前提されていたのに対して、本研究では、さまざまな人々から成る社会で、どのようにメンバーが選択され、メカニズムが形成されていくかについて、実験経済学の手法を用いて分析した。 メカニズムが形成・維持されるために、必要な条件は何かを探るため、以下の設定の下での実験を行った。まず、メカニズムに参加メンバーの過去の行動に関する情報、すなわち、過去の支払額の情報が利用可能であり、これらの情報に基づいて、次期のメカニズムにおいて構成するメンバーを選ぶ投票を行う。各メンバーは、他のメンバーから、メカニズムに参加することの承認を得る必要があり、相互認定ルールによってメカニズムの構成メンバーが決まる。参加の承認に最低限必要な他のメンバーの数は、他のメンバーが全員一致して承認することが必要なケースと、過半数以上のメンバーが承認することが必要なケースの二種類の条件を考察した。さらに、支払いをしなかった人は、社会的便益を受け取ることができない罰則ルールを導入する。2種類の投票ルールと罰則ルールを各々用いるか否かを条件として組みあわせ、全部で6種類の設定を比較した。 このようにして、過去の情報に基づくメンバー選抜の投票と罰則ルールが、メカニズムの形成・維持にどのような役割を果たすのかを実験で吟味した。特に、全員一致して承認することが必要なケースよりも、過半数以上のメンバーが承認することが必要なケースの方が、平均支払額が高いという結果を観察した。さらに、罰則ルールの導入は必ずしも支払額の増加をもたらすわけではなく、不払い者に対する制裁効果が十分に機能しないことが起こりえた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部性の存在する経済におけるメカニズム・デザインに関連して、どのようにメカニズムの参加メンバーが選択され、メカニズムが形成・維持されていくかについて、実験経済学の手法を用いて分析し、過去の情報に基づくメンバー選抜の投票と罰則ルールの果たす役割について、従来の研究では得られなかった新たな知見を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
メカニズムの形成・維持プロセスの研究に関する実験結果についてより詳細な分析を継続するとともに、以下の研究課題も検討する。まず、公共財供給メカニズムとして代表的なピボタル・メカニズムと自発的支払メカニズムについて、メカニズムが繰り返し用いられた場合に、どのようなパフォーマンスの違いが生じるかについて実験による検証の分析を実施する予定である。 次に、社会的に望ましい状態について、メカニズムデザイナーの報告する責任を感じているような参加者が存在する場合におけるメカニズム・デザインについて、理論結果の実験による検証にも着手する。 さらに、複数の均衡が存在するケースについて、安定性や公平性などの観点から均衡にどのような相違があるかについて理論的研究と行うとともに、理論の実験による検証も行う予定である。 また、メカニズムの参加者が先のことも考慮に入れた先見的行動をとり、複数の経済主体による提携形成行動もとりうる状況を考察する。人々が先見的行動や提携形成行動をとるときに,どのような状態が安定的になるかについて吟味し、効率的な資源配分を遂行できるメカニズムの特徴を研究する。このメカニズムと、ナッシュ均衡で想定されている近視眼的行動と独立な個別行動を参加者がとる場合に、効率的な資源配分を遂行するメカニズムとの比較にも着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたメカニズムデザインに関連した実験を、次年度に実施することになったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
メカニズムデザインに関連した実験を実施するために、参加者に支払う謝金等に使用する。
|