研究課題
複数の利害関係者による単一の意思決定は、社会経済のあらゆる場面で観察できる意思決定の重要な形態であり、その特徴やプロセスを解明することは社会科学全般における重要な課題である。本研究は、心理学などで提案されている集団意思決定のモデルを利用することにより、戦略的状況下で、集団が個人とは異なる様々な性質を見せる背後にあるメカニズムを、モデル構築と実験による検証を通じて明らかにしていく。28年度は、集団の選好が個人の選好と比べてどのように変質するのかを、利己的選好か利他的選好かという社会的選好に関するドメインと、どの程度のリスクを許容し好むのかというリスク選好のドメインの、二種類について明らかにするような実験を引き続き実施すると同時に、新たに集団と個人とで時間選好がどの程度異なるのかを明らかにするような実験も実施した。現在、実験結果をまとめているところである。この他、集団が利己的な選択と利他的な選択のどちらを選択するのか、選択傾向は個々人に割り振られた役割や他の集団の選択に対する予想にどのように影響されるのか、を調べるよう研究が論文としてまとめられ、海外査読誌(Sustainability Science)に掲載されることとなった。また、集団意思決定のルールによって、各人の選好がどのように変質するのかを明らかにする実験も行い、投票ルールによって個人の選好が変化することが確認された。当該結果は、現在論文としてまとめているところである。
2: おおむね順調に進展している
28年度は、集団内の個人は、単なる個人として振る舞うときと、選好そのものが変化している可能性を明らかにするような実験を、新たに時間選好に注目して実施した。その他、集団意思決定のルールが個々人の選好にどのような影響を与えるのか確認する実験を行った。現在2本の論文が投稿準備中、2本の論文が執筆準備中であり、順調に進んでいると言える。
計画通りに実験を実施し、論文を執筆していく。実験実施に際して、慶応大学のPDの田村氏の協力を仰ぐ予定である。また、被験者数の観点から本学だけで実験が完結できないような際には、早稲田大大学、京都産業大学、関西大学の実験室に協力を要請する予定である。
本学の実験参加者プールの整備とマンパワーの欠如により、初年度(H26)に予定していた量の実験が実施できず、計上していた謝金額を使用できなかったことが原因である。当該問題は、高知工科大学以外の実験実施場所を使用すること、実験実施にPDの助力を得ることを通じてH27には解決されており、H27、H28単体で見れば順調に研究は進んでいる。
未使用額1,016,057円は、H29年度の実験実施用の謝金と旅費として使用していく計画である。H29年度の申請額(補助金分+基金分)3,000,000円と合わせて、200,000円を物品として、1,300,000円を人件費・謝金として、1,000,000円を旅費として、1,516,000円をその他として使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Sustainability Science
巻: 12 ページ: 409-420
10.1007/s11625-016-0419-8