研究課題/領域番号 |
26285050
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
根本 二郎 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20180705)
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研究分担者 |
中野 牧子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00379504)
SHIN KONGJOO 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (30757232)
後藤 美香 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50371208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境効率 / 財務効率 / 生産性分析 / 効率性分析 / データ包絡分析 / 確率フロンティア分析 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、データ包絡分析(DEA)と確率フロンティア分析(SFA)を用い、財務要因の入った効率性の計測と環境負荷要因の入った効率性分析を、日本の9電力会社のデータを主に用いて行った。 財務要因を含む分析については、前年度アジアの企業について行った分析と同様の分析を日本の9電力データを用いて行った。環境負荷要因を含む分析については前年度の成果を受けて、火力発電全体の効率性分析に加え、内燃力とガスタービンを除く汽力発電についての分析を行った。 財務要因と環境負荷要因の双方を統合して行う生産性分析および効率性分析については、両要因の統合システムとしてハイパーボリック距離関数モデルを開発した。このモデルは、通常のインプット(資本、労働、燃料)とアウトプット(発電電力量)に加え、環境負荷要因(SOx,CO2)をハイパーボリック距離関数に望ましくないアウトプットとして定式化し、さらに生産性に影響を与えると考えられる財務指標を外生変数として組み込んでいる。実データによる応用研究として、日本の9電力会社のパネルデータを用いてハイパーボリック距離関数を確率フロンティア分析によって推定し、9電力会社の効率性を計測した。またこの結果に基づいて、財務、環境負荷のそれぞれの要因が効率性にどの程度の影響を及ぼしているかを分析した。 ハイパーボリック距離関数統合モデルの完成により原理的には、包括的な生産性の要因分析が可能となった。すなわち、生産性を効率性要因、技術進歩要因、規模の経済性要因、環境負荷要因、財務要因に分解することを可能にするフレームワークを提示できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現段階で、日本の電力会社の実データを用いて、財務要因と環境負荷要因を統合的に含む生産性の分解分析を行うことができていない。これを実現するために次のような段階を踏む必要がある。1)財務要因を含む生産性および効率性分析 2)環境負荷要因を含む生産性およびび効率性分析 3)1)と2)の方法の統合による財務要因と環境負荷要因ともに含む効率性分析モデルの開発 4)3)のモデルを用いた包括的な生産性の要因分解分析 現段階で3)まで完了しているが、4)については生産性の計測はできるものの、生産性指数を分解する方法が完成しておらず、分解分析を直ちに実行することができない。その原因は研究代表者の多忙にあり、このため補助事業期間の延長を申請し承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の延長申請が認められたため、研究計画のうち完了していない部分の研究を推進する。すなわち、財務要因と環境負荷要因を含むハイパーボリック距離関数統合モデルから計測される生産性指標について、その包括的な要因分解分析の方法を確立する。当該分析方法は、日本の9電力会社のパネルデータに適用して、その分析上の有用性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅延により、研究最終段階の生産性の包括的な要因分析法の開発を実施できていない。この結果、これに係る経費が支出されず次年度使用額が生じた。研究計画の遅延は専ら研究代表者の多忙によるもので、研究上の困難が発生したためではない。 なお本研究計画は本来は平成28年度が計画最終年度であったが、補助事業期間の延長申請を行い承認を得ている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究最終段階での成果取りまとめのため、代表者と分担者が集まって打ち合わせを行うための旅費に支出する。また、成果を三本程度の英文論文に取りまとめ投稿するため、英文校正に支出する。
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