研究課題/領域番号 |
26285055
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
長岡 貞男 一橋大学, 商学研究科, 教授 (00255952)
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研究分担者 |
山内 勇 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (40548286)
大西 宏一郎 大阪工業大学, 知的財産学部, 講師 (60446581)
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70507201)
岡田 吉美 一橋大学, 商学研究科, 教授 (20732647)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知識 / 開示 / 特許制度 / 発明 / 革新的発明 |
研究実績の概要 |
2014年度は、データセットの構築に取り組むと共に、それによる以下の2つの研究課題の分析を行った。 (1)米国における公開制度導入の効果 米国における出願公開制度の導入(2000年11月)が知識フローに与える影響を分析し、以下の知見を得た。自己引用を除く発明者引用データによれば、制度導入によって全技術分野で知識フローは加速化した。同時に、制度改正前に公開までの期間が長かったコンピューター・通信の分野では、長期的な知識フローの水準は低下し、研究開発の重複低下を示唆する結果も得た。研究成果("Effects of early patent disclosure on knowledge dissemination: evidence from the impacts of introducing Pre-Grant Publication System in the United States")をWPとして公表の予定。 (2)日本で2002年9月から導入された先行技術文献情報開示制度の効果を分析した。開示からの利益は、先行優位性確保あるいは特許権の早期確保の効果に依存する。本研究では以下を見いだした:(1)制度改正によって発明者引用の増加分と同程度、発明者引用と審査官引用に共通する引用が増加し、審査官にとっても有用な発明者引用が増加した。(2)発明者と審査官に共通する引用の増加は、査定率の向上および審査期間の短縮の効果をもたらすが、その効果は制度改正後により大きくなった。研究成果(「発明者による先行技術開示の選択」)は、WPとして公表の予定。 上記の研究成果を、内外の学会、及び2015年3月に行った国際ワークショップ("Workshop on the Disclosure Function of the Patent System")で発表し、国際的な学者2名からのコメントを頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の中の最初の2つ((1)開示タイミングが知識の伝達速度及び技術進歩のペースに与える影響、(2)開示規則が開示情報に与える影響)についてデータを構築し,具体的な研究成果を出すことができた。また、研究成果を国際的な学会(OECD主催のIPSDM(東京にて)及びAPIC(Sidneyにて))、知財学会、並びに研究代表者が組織した国際ワークショップで発表し、欧米の有力な学者等から良いコメントを頂くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
データベースの構築を引き続き行い、またデータ整備が終わった分野から本格的な計量経済分析に取り組む。(1)開示タイミング、知識の伝達速度及び技術進歩のペースの分析:米国における出願公開制度の採用の影響分析を引き続き行うとともに、日本における早期審査制度の利用の影響、そして国際的な開示制度の差に着目した分析を行う。その際、開示の2つの効果(研究開発の重複の排除及び累積的な研究開発の発展)の識別の研究にも取り組む。(2)開示規則及び特許適格性の基準と開示情報の豊富さ:日本における発明の先行技術の記載要件の強化の影響分析を引き続き行うと共に、日米の特許制度における同一発明の開示からの情報量を、科学技術文献における日米特許の引用頻度等から分析を行う。(3)企業の研究開発能力と開示情報の活用:審査官引用を基準として発明者引用文献の年齢や範囲を企業間で比較し、発明者による開示情報の活用が研究開発パフォーマンスに与える影響を分析する。また、企業の研究開発能力がこのような開示情報の活用能力に与える影響を分析する。 データベースの整備として(4)被引用側の特許の権利状況と引用のダイナミクスの研究を進めるためのデータを整備する。日米欧で引用される側の特許の権利状況(公開、審査請求、査定あるいは拒絶、権利消滅)とその特許の被引用の時系列プロファイルを構築し、これによって特許権の状況が知識フローに与える影響を分析することを目指す。 (5)革新的発明のデータベースを整備する これによって革新的発明における特許情報の役割を分析できるようにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
革新的発明のデータベースの作成にかかるアルバイト費用の支出を延期したため
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次年度使用額の使用計画 |
革新的発明のデータベースの整備は、2015年度から本格的に行い、そのためのアルバイト費用として繰り越した金額を活用する。
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