最終年度であるため、これまでの研究のレベルアップに注力した。まず企業価値がデフォルトレベルまで下がる以前に「任意のあるレベル」を最後に通過する時点の分布、その最終通過時刻からデフォルトに至るまでの時間の分布などに関する研究を精緻化した。今年度は実用的なツールをいくつか開発することにより、応用面での充実に取り組んだ。"An application of time reversal to credit risk management" (Egami and Kevkhishvili)として査読付ジャーナルに投稿している。資本市場の変化を企業価値に反映させることができるモデリングであるため、構造変化を踏まえた実証研究も今後可能になると考えている。
銀行のレバレッジ比率をモデルに組み込み、債権証券化の前後における銀行価値の変化、金融危機を想定した大きな構造変化における銀行行動を分析する論文"A model for banks' asset securitization program" (Egami and Hosono)を完成し、査読付きジャーナルへ投稿中である。今年度はモデル分析に加えて、債権証券化で得られた資金がどのように利用されたかを判定するツールを考案するなど改良を行った。
課題研究遂行のためのマルコフ過程の研究として取り組んだ"A direct solution method for pricing options involving maximum process" (Egami and Oryu)が、Finance and Stochasitcs (査読付)に掲載された。現在値がこれまでの最大値からどの程度変位しているかに関する研究であり、ファイナンスにおいてはドローダウンと呼ばれる概念であるため今後の応用が期待できると考えている。
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