研究課題/領域番号 |
26285070
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
須齋 正幸 長崎大学, 経済学部, 教授 (40206454)
|
研究分担者 |
森保 洋 長崎大学, 経済学部, 教授 (10304924)
鳥海 不二夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30377775)
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40309737)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | リミットオーダー / キャンセレーション / 市場の取引特性 / 投資行動バイアス |
研究実績の概要 |
本年度は、市場の取引手法、具体的には高頻度取引に焦点を当て、その新たな取引が市場の価格形成に与える影響を中心に研究を進めた。また、従来は相対取引が主な取引手段であった外国為替市場に、インターネットを介した取引手法としてのEBSにおけるlimit orderとmarket orderが価格形成に与える影響を、東京、ニューヨーク、ロンドンの市場毎の特性を考慮しつつ、分析した。 高頻度取引によっては、価格形成における情報の伝播速度が速く、新たな情報が価格に反映さるまでのライムラグが短いという点で、市場の効率性にプラスの影響があるものと考えられる。 また、EBSによるbook形式による外国為替取引により、スプーフィングなどのlimit orderの影響が外国為替市場にも表れるものと考えられる。この影響を、limit orderがboolに記録されてから、市場から退出するまでの時間を被説明変数とした研究(life time of limit order)では、市場の厚さ、取引頻度、ボラティリティがその長さに影響を与えることが明らかとなった。ここでのデータは、個別取引ごとのデータを用いてることから、個別のディーラーの取引行動を明らかにしていると考えられるため、ディーラーに一般的に影響を与えるであろう要因が明らかになったことで、ディーラー間での集団行動バイアスの源泉を明らかとすることができた。 また、buyサイドのlimit orderに対して、sellサイドのlimit orderが影響を与えることも明らかとなったために、この要因もディーラー行動特性を議論するうえで重要な観点であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの市場のデータによる分析から、ディーラーの行動特性に影響を与える要因が明らかとなった。また、同時に集団行動バイアスを表すための人工市場の構築も進んでおり、現時点で学会報告論文としてまとまっており、また最終年度では国際会議での報告も決定している。 ビジネススクールの学生を対象とする心理学実験についても、コンピュータを利用した実験系は年度末には完成しており、最終年度前半には、イタリア、イギリスにおいて実験が予定されている。 最終年度においては、これらの成果を組み合わせることで、当初予定していた研究成果を得られるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
集団行動バイアスを内蔵した人工市場はすでに構築が終わっている。今年度は、心理学実験により明らかになるバイアスを、具体的に人工市場に導入することで、集団行動バイアスの価格流列に与える影響を明らかにする。 また、人工市場から生み出される価格流列と、EBSから入手している為替レートの取引データを用いて、これらの相違を実証的に明らかにする。 この実証研究から、集団行動バイアス特性の日本や海外との相違を明らかにし、それが外国為替レートの変動特性にどのように影響を与えているかを分析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
心理学実験のコンピュータプログラムの開発が年度末までかかって完成したため、実験を最終年度に実施するため
|
次年度使用額の使用計画 |
心理学実験のコンピュータプログラム開発のための謝金、滋賀大学、海外大学における実験経費が必要なため。
|