補助事業期間を1年間延長し、本年度が最終年度となった。 研究代表者らによるこれまでの研究では、東京23区の土地取引の成約価格と融資金額のマッチングデータを用い、不動産融資(LTV)が不動産価格(面積単価、地域と年で調整済み)を引き上げる効果があることを示した。この研究では、不動産担保融資を得て不動産を購入するケースで、LTVを10%ポイント引き上げると、購入価格が15%上昇することが示された。この研究は、マイクロデータを用いて因果関係の方向性を識別し た最初の分析である。しかしながら、この研究の不十分な点としては、不動産の個別性を十分にコントロールできていないために、仮に価格に影響する属性がLTVと相関していれば、見せかけの相関が観測され、バイアスを生じることとなる。 本年度においては、この研究で採用している操作変数法の妥当性を確認するために、へドニック変数を用いて分析しつつ「不動産融資に影響するが不動産価格には直接影響しない操作変数」としての通常の抵当権設定と根抵当権の設定について実務面、データ面から検証を追加した。また、不動産担保融資が不動産価格を変化させる、という方向の因果関係や、「不動産融資に影響するが不動産価格には直接影響しない操作変数」となりえる事象を発見するため、最終年度も引き続き国内外で制度変化、外国からの不動産投資の急増などの条件変化を生じた地域のアネクドータルで自然実験的な事例を観察した。
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