研究課題/領域番号 |
26285074
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 正広 一橋大学, 経済研究所, 教授 (80178772)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 統計調査史 / 日本近代 / 調査組織 |
研究実績の概要 |
平成27年度中には、京都府立総合資料館に所蔵されている「京都府何鹿郡志賀郷村役場文書」に、統計行政関係の資料が多量に含まれているのを発見し、資料館と交渉してその全冊を電子化して取得、一部については解読を開始した。 川島孝彦元統計局長の個人アーカイブ(川島文庫と略す)の整理を進行し、平成28年度には目録を刊行できる見通しとなった。 また川島文庫の解読と分析を継続した結果、第2次世界大戦中の日本の統計システムに関して、新たな知見を得るにいたった。この知見については平成28年度発行の『経済研究』(一橋大学経済研究所)にて公開の予定であるが、概略を述べるならば、両大戦間期の統計データの信頼性について、①統計調査の末端組織であった市町村に調査依頼や照会が集中し、担当者が多忙となったため、特に農商務省系統の生産統計や内務省系統の港湾統計などにおいて、統計データの信頼性が著しく損なわれている可能性が高いこと、②市町村からの統計報告をとりまとめる立場にあった県レベルの統計担当者による審査は、県域を超えた取引の対象となる生産物に対しては相対的に厳しく行われ、県内で消費されてしまう産物についてはあまり厳密な審査が行われなかったこと、以上の点が明らかとなった。 連携研究者と、平成27年9月11日から13日に北海学園大学(札幌)で開催された経済統計学会全国研究大会にて「日本の統計史を考える」というタイトルのもとに報告のセッションを開いた。また、同期間に連携研究者との会合を持ち、それぞれの分担に関する研究の進行状況について確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①京都府何鹿郡志賀郷村行政文書の検討に着手した。 ②川島文庫の整理・目録化の進行とともに、そこに含まれる資料、特に戦中期の資料の解読を進めた。 ③平成27年9月11日ー13日に北海学園大学(札幌)で開催された経済統計学会の全国研究集会にて、「大正期の統計調査環境について」と題して講演を行った。 ④同大会にて、連携研究者および研究協力者(森博美、上藤一郎、尾関学、小林良行、山口幸三)が、本研究のテーマに即した報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
①京都府何鹿郡志賀郷村行政文書の検討を継続し、明治期から昭和戦前期までの統計調査の末端における実態を明らかにする。 ②川島文庫の検討を継続し、中央における統計編成システムの変遷と、統計データの利用上の問題点などについて解明する。 ③連携研究者、研究協力者の他、海外の研究者の参加を得て研究集会を開催し、本研究の成果を集約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張(台湾、約一週間)を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
川島文庫保管のための文書保存箱購入の一部に充当する。
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