研究課題/領域番号 |
26285076
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀 和生 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60219201)
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研究分担者 |
坂根 嘉弘 広島修道大学, 商学部, 教授 (00183046)
木越 義則 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (00708919)
萩原 充 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (20180804)
谷ヶ城 秀吉 名城大学, 経済学部, 准教授 (30508388)
加島 潤 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (50463899)
浅野 豊美 中京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60308244)
富澤 芳亜 島根大学, 教育学部, 教授 (90284009)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東アジア / 資本主義 / 工業化 / 米国の東アジア政策 / パクス・アメリカーナ |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀東アジア全域の経済変動を、19世紀ヨーロッパ資本主義の台頭に比肩する資本主義の発展と捉え、その長期の過程を総合的に分析する。とりわけ、1940年代から50年代初頭の戦時動員、米国の対東アジア地域政策、東アジア各国の相互関係の解明等を柱とした。 (1)メンバーを派遣して、以下のような本研究に関わる資料調査と収集をおこなった。中国では、上海図書館、中国国家図書館および中国社会科学院経済研究所図書館、遼寧省档案館等、台湾については国史館、中央研究院近代史研究所等、米国では国立公文書館、議会図書館等を中心に調査した。また、中国、韓国、台湾のメンバーは日本国内で調査した。 (2)比較史的な共通素材をつくるために、戦前戦後をついだ東アジア各国の経済統計のデータベースの構築を代表が中心となり進めた。 (3)8月20・21日に京都で全員が参加して総合研究会を開催した。(a)工業化につき、堀和生「東アジア貿易から見た資本主義化の展開」、富澤芳亜「近代中国の紡織技術者の形成」、加島潤「中国計画経済期の工業化」が報告され、工業化類型について議論した。(b)エネルギーにつき、萩原充「中国エネルギー産業」、小堀聡「1950 年代日本の国内資源開発主義」、洪紹洋「戦争・市場と燃料の発展」が報告され、地域レベルの需給について議論された。(c)国際関係につき、浅野豊美「脱植民地化をめぐる賠償問題」、皇甫秋実「戦後アメリカの対中援助」が、米国の対アジア政策を論じた。(d)農業につき、坂根嘉弘「東アジアの農民団体と家族形態」が発表された。(e)流通通関については、谷ヶ城秀吉「戦時経済下の三菱商事」林采成「戦時下満鉄の輸送戦」、木越義則「中国海関から人民海関へ」が1940年代東アジアの流通と政策を議論した。総合討論によって、東アジア地域で歴史像をまとめる方向性が論じられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)一次資料の調査発掘は、米国、英国、台湾においてそれぞれ調査を実施しており多くの一次資料を確保し、予定通り順調に進んでいる。一部の調査のみ、メンバーのサバティカルの関係で次年度に繰り延べた。 (2)データベースの作成も、戦前朝鮮(1908-1941年)・台湾(1901-1943年)、戦後韓国(1946-1952年)と台湾(1949-1972年)の貿易データベースの構築作業を、学生アルバイターを動員して進めており、順調に進展している。 (3)各人の分担研究の推進と各研究の調整、全体の総括的な討論と方向付けについて、平成26年8月20/21日の京都大学での合同研究会によってコーディネートできている。当日の研究会は、個別発表がすぐに論文になるほどに、水準の高いものであり、着実な共同研究の進展を示している。今年度の研究の進め方についても、議論と合意ができており問題はない。 申請時の予定と唯一異なっている点は、検討していた今年の国際経済史学会京都会議で中間発表をすることを、見合わせたことである。理由は2つある。一つは、本研究の採択されたのが平成26年4月初であったが、国際経済史学会京都会議のパネル申し込み締め切りが同年5月末で、2ヶ月の猶予しかなかった。4国にまたがるメンバーが集まることができず、メールで参加について検討を重ねたが、プロポーザルを作成する準備時間が十分でないと考えた。さらに、本プロジェクトが3箇年の事業であるが、同会議開催まで1年4ヶ月であり、中間報告を作成する時間が十分でなく、時期尚早だと判断した。 それに代わるものとして、2年半が経過した平成28年の秋期に、大きな学会の大会において本テーマでパネルを主催することで、本プロジェクトの中間発表を公的におこなうこととした。それにともなって、準備のために海外研究者を招聘する研究会の開催は、今年度次年度に繰り延べした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)資料収集については、初年度の成果と教訓点を踏まえて、メンバーを派遣し、新たな機関と資料を開拓してゆく。中国については、初年度に引き続き上海と北京の研究機関での調査を続けながら、青島市档案館、重慶市档案館等のような地方の档案館について調査を広げる。台湾での資料発掘の対象は、台湾省文献委員会所蔵の生管会資料档案 工作小組会議及歴次各項業務検討会記録等、中央研究院近代史研究所所蔵の李国鼎私人档案、経済档案「日本賠償及帰還物資接収委員会」、「経済安定委員会」、「米援会」、国史舘の「蒋介石文書」等である。米国では、国立公文書館と議会図書館での調査を続けながら、研究の進展によって、テキサス州ジョンソン図書館のロストウ文書、アイゼンハワー・トルーマン図書館、マサチューセッツ州ケネディ図書館等東アジアに関係の深い個人文書発掘について調査したい。米国国立公文書館と議会図書館で、日本に招来されていないForeign commerce and navigation of the United States 1947-1962のマイクロフイルム撮影をおこなう。 (2)東アジア相互経済関係データベースについては、初年度の貿易統計に続き、産業と資本、労働力等のデータについて入力を進める。また、本研究のなかで代表が中心となって、数量的な分析を専門的に取り組み、成果をメンバーに提供する。 (3)この年度の研究において、8月19・20日に全メンバーの参加による研究を開催する。本プロジェクトの顧問である久保亨(信州大学)、朱蔭貴(復旦大学)の参加を得て、全体構想に向けた提案と議論をおこなう。 (4)次年度に学会発表をおこなうべく、その分担について議論決定する。 (5)本テーマに関するテーマごとの小セミナーを年会数回ほど開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)申請時には、平成27年夏季に規模の大きな中間発表を、国際経済史学会京都会議の場でおこなう予定で、その準備と本番のため海外メンバー3人を2度ほど日本に招聘する予算を組んだ。【現在までの達成度】の項で説明したような理由で、その中間発表の場を平成28年度秋季に変更したことにより、そのため2度の渡航旅費200,000万円×3人×2回=1,200,000円の執行を平成26年度から、平成27年と平成28年に分けて繰り延べることとした。 (2)本プロジェクト申請が採択された後に、分担研究者メンバー2人が、それぞれの勤務先大学のサバティカルをとれることになった。それで、2人が米国と中国に長期滞在して、本プロジェクトに向けての資料収集に従事したいと希望した。両国での資料探査は本研究推進の目的に合致すると判断されたので、400,000円×2人=800,000円の海外調査旅費を、平成26年から平成27年に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年12月中国、韓国、台湾のメンバーを日本に招聘して準備研究会を開催する。その渡航と滞在旅費 200,000万円×3人=600,000円。平成27年中に、サバティカル取得の分担研究者に、中国と米国の調査旅行と滞在旅費を追加支給する。各自 400,000円×2人=800,000円。 平成28年10月中国、韓国、台湾のメンバーを日本に招聘して、政治経済学・経済史学会の全国大会においてパネルを主催する。その渡航と滞在旅費 200,000万円×3人=600,000円。
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