戦前期総合商社の人材に関する研究は、近年、最大手であった三井物産を中心に活発化している。しかし、従来分析に際して用いられてきた「職員録」は担当掛と限られた職位しか判明せず、総合商社がどのような能力を必要とし、蓄積したのかを十分に解明することはできなかった。 本研究では、海外で収集し新たに用いる「三井物産使用人禄(特別職員録)」を用いた1916年から1944年アデノ時期における三井物産の全社員の「年齢」「入社年」「出身校」「職種」「給与」「生年」「出身地」等の情報をすべてデータ化し、同社社員の職歴形成の実態を解明する。個体情報の深さと対象期間の長さの両面において国際的にも得難い規模のパネルデータを構築して総合商社の効率性を解明するとともに、企業組織一般の効率性をも解明する視点を提供することを目的とする。 以上の研究課題を解明するため素データの入力とデータ化作業を進めたが、その過程で上記課題を解明するために次の2つの追加的データ入力の必要性が生じた。一つは個人の業績を評価するための材料となる部署ごとの業績推移のデータであり、もう一つは同データから得られる結果の総合商社一般への適用を判断する上で必要となる比較検証可能な他社データである。具体的には三井物産事業報告書から対象年度における部署ごと、取引ごとの業績データ入力作業を完成させるとともに、三菱商事の職員録について比較検証可能な時期についての全社員のデータ入力を完成させた。
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