研究課題/領域番号 |
26285081
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
青島 矢一 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (70282928)
|
研究分担者 |
米倉 誠一郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00158528)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 企業競争力 / 環境/エネルギー問題 / 政策効果 / スマート社会 |
研究実績の概要 |
(1) 太陽光発電:中国太陽光産業の集積地である無錫市で質問票調査とインタビューを行い、2010年以降の急成長にとって中小企業が果たした役割が大きかったことを明らかにした。中小企業は大企業から鍵となる技術者を引き抜くだけでなく、友人関係を通じた重要な技術や購買情報の共有、企業のレンタル契約などを通じた経営ノウハウの共有も行っていた。こうした相互学習を通じてコスト競争力を高めた中小企業は、大企業にOEM供給を行い、市場価格の下落に影響を与えた。一方で、結果としての同質化は、収益性の悪化という問題を生み出したことも明らかにした。日本の政策の影響に関しては、家庭用太陽光発電のデータ分析から、FITの高い価格が様々な不経済と企業競争力の低下をもたらしたこと、価格低下を目論んだ設置補助金がかえって価格の一時的な高止まりをもたらしたことを実証した。 (2) 地熱発電:小型地熱発電については、熊本県小国町、鹿児島県霧島市、大分県別府市における事業状況の観察を続け、例外事例を除いて、小型案件で経済性を確保することは難しいことを明らかにした。そして「経済性に乏しい小型地熱への政策的補助がいかに正当化されるのか」という問いを新たに考えた。大型案件の開発が困難に直面する中、開発しやすい小型案件に注目がいくことは理解はできるが、正当性に乏しいことを議論した。 (3)スマートシティ/スマートグリッド:分散型電源を活用したスマートシティの実現にとっては蓄エネルギー技術が鍵となるという認識のもと、研究会を通じて蓄電池の技術と事業の可能性を検討した。低コスト材料の活用とサイクル寿命をのばすことが鍵であること、そのためには新たな単価計算方法と標準が必要になるという感触をえた。 (4)未利用熱活用の分野における産業・企業発展の可能なあり方について全体像を整理した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) 太陽光発電に関するフィールド調査は、無錫市政府や中小企業ネットワークのおかげで、計画以上に進んだ。日本における政策の効果についても、太陽光発電協会から提供を受けたデータの分析が予定どおり進み、政策のもたらした効果と問題点を明らかにすることができた。 (2) 小型地熱発電のフィールド調査は計画通り進み、現場に深く入った観察ができた。一方、大規模地熱発電に関しては、現場調査から経済性に関する情報が得られないこと、また、予定していたBNEFのデータベースサービスの値段が高く、本事業の予算の枠内では年間購読できず、別の情報源を模索しなければならなくなったことから、計画通り進まなかった。 (3)スマートシティ/スマートグリッドについては、日本の4カ所で行われた実証試験の全体像を把握することはできたものの、実証試験自体が終わったこともあり、当初計画したような深い研究にまでいたっていない。一方、研究会を通じた、蓄電池に関する調査は進んだ。 (4)未利用熱活用に関しては技術領域の全体像、産業・企業発展の可能なあり方を整理するにとどまっている。これは単に時間的な問題であり、当初計画に多くを盛り込みすぎた結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 太陽光発電については、計画通り進んだ調査結果を論文や書籍としてまとめる作業を行う。また、日本の事業用太陽光発電に関するデータが利用可能となれば(現在交渉中)、これまでの研究を補完する形で、拡張したいと考えている。 (2) 小型地熱発電については研究結果を論文としてまとめる作業を行う。大規模地熱発電に関しては経済性に関するデータを得ることが困難な状況であるため、既存文献を参照しつつこれまでの調査の内容をまとめることになる。 (3)スマートシティ/スマートグリッドについては、引き続き蓄電池に関する調査を行うとともに、日本で唯一商業的に運営されているFujisawaサスティナブルスマートタウンの事例研究を行うことにする。 (4)未利用熱活用に関してはこれまでの整理に基づき、仮説的ではあるが、経済的に実現可能なあり方を提言する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算が足りず、当初予定していたデータベースの年間契約ができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰越額と今年度予算を合算して今年度は部分的にデーターベースを購入する予定である。
|