電力安定供給、温暖化ガスの削減、経済成長という3つの問題を解決する方策について、企業競争力を考慮した経営学的な視点から研究を行った。 太陽光発電に関して、第1に、江蘇省無錫市の産業集積に焦点をあてて中国太陽電池企業の急発展のメカニズムを明らかにした。中国太陽電池企業の競争力の背後には、中小企業ネットワークの存在があり、企業を越えた技術・経営情報の伝播と共有が、希少資源の産業レベルでの効率的活用による競争力向上に寄与するとともに、同質化競争による凋落の原因にもなっていた。第2に、日本で施行されたFITは、国民負担だけでなく、日本の太陽電池企業の業績悪化をもたらした可能性を明らかにした。中国企業が高い競争力をもつ中、環境/エネルギーという大義のもと破格の買取価格を設定したことは、長期的には国内企業の競争力低下と業績悪化をもたらすという政策の逆機能が生じていた。 地熱発電に関しては、温泉熱を利用した小型地熱発電が成功する条件を、熊本県の「わいた温泉」や福島県の「土湯温泉」などにおける成功例の研究から明らかにした。小型温泉の成功には、泉源や冷却水など多くの自然条件が揃っていること、そして、温泉旅館を含む地域住民の協力体制とリーダーシップが鍵であるが、こうした条件が整うことは簡単ではない。大規模地熱発電は、規制緩和の影響もあり徐々に進みつつあるが、資源リスクと開発コストの高さゆえ、期待されるほどには進んでいない。コスト高の詳細な原因は不明で続けて研究する必要がある。 スマートグリッドに関しては、横浜と湘南の事例研究を行った。エネルギーの自己充足には蓄電池のコスト低下が鍵であり、今後、蓄電池のイノベーションが重要性を増すこと、蓄電池技術を抑える企業が競争力をもちえることを示唆した。未利用熱に関しては、温泉熱の余剰利用の可能性を明らかにした。
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