研究課題/領域番号 |
26285082
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
中馬 宏之 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (00179962)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 半導体設計 / 電子システムレベル設計 / EDA / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本のサイエンス型産業がデジタル・コンバージェンス時代の境界破壊型の流れに喘いでいる様子を、主に電子システムレベル(ESL)設計ツールで起きた事例の聞き取り調査とそれらの整理・一般化を中心に行った。より具体的には、中屋雅夫氏(半導体理工学研究センター(STARC)社長、元ルネサス製品技術本部・設計技術統括部長)、久保田達也専任講師(成城大学社会イノベーション学部)と共に、EDA(半導体設計ツール)産業で今や70%前後のシェアを獲得するに至った米国Synopsysへの調査を長期にわたって実施した。また、昨年に引き続き、この様な聞き取り調査に関連してEDA産業の歴史的な発展プロセスの特徴を明らかにするための財務分析やネットワーク分析を行った。また、最近の脳型プロセッサー(Neuromorphic Processor)と研究開発状況、特に同プロセッサー利用のための設計環境に関する調査も欧州拠点への実地調査という形で実施した。さらに、中屋氏・久保田氏とはほぼ月に1回の頻度で研究会を実施し、仮説の形成やブラッシュアップに努めた。当プロジェクトの球面収差・色収差補正のイノベーションに関しては、津野勝重氏(日本電子出身、専門・電子光学)と松井良夫氏(物質・材料研究機構特別研究員、同前共用基盤部門・超高圧電顕共用ステーション長)との3名による研究会を月1回のペースで6月頃まで行い、同イノベーションの材料科学・生命科学の分野へのインパクトに関して討議を重ねた。このような研究プロセスの中で、下記の論文を発表した。
・中馬宏之著『ICT/AI 革命下でのベッカー流人的資本理論の再考:自己変化能という視点から』、日本労働研究雑誌 2015年10月号(No.663)、68-78頁
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
半導体設計ツール関連に関しては、米国シノプシスへの深い聞き取り調査の実施が可能となり、半導体設計のプロである上記中屋氏と 半導体産業分野での豊富な聞き取り調査経験を持つ久保田専任講師との共同作業も、私事の発生によりややペースダウンしてしまったが、着実に進展しており、中馬・久保田・中屋3名の共著という形の中間報告的な論文の中心仮説、この仮説をサポートするためのハード・ソフトの両イビデンスも昨年度に引き続き収集中である。電子顕微鏡・収差補正関連に関しては、先の津野・松井両氏との研究会が諸般の事情により中折れしてしまったが、同イノベーションの現状、特に日本電子勢による失地回復傾向やその要因について専門的な視点から検討できた。ただし、中心となる説明仮説のブラッシュアップの完成度はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
半導体設計ツール関連に関しては、Synopsysを中核に据えた聞き取り調査を中屋・久保田両氏と共にさらに推進し、次年度半ばまでには中間報告的な論文を3名の共著で『組織科学』に投稿する計画をしている。さらに、この半導体設計ツール関連論文と電子顕微鏡・収差補正関連の調査研究成果に関しては、現在岩波書店から次年度半ば以降に公刊を予定している研究書(by中馬著)に所収する予定である。また、可能であれば、先に触れた脳型プロセッサー(Neuromorphic Processor)と研究開発状況、特に同プロセッサー利用のための設計環境に関する聞き取り調査を米国IBMワトソン研究所などに実施したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の後半に半導体設計関連での内外での調査を予定していたが、家族の健康上の問題が発生したため、調査研究上の自由度が少し制限されることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
脳型プロセッサー(Neuromorphic Processor)の研究開発状況、特に同プロセッサー活用のための設計環境に関する聞き取り調査を米国IBMワトソン研究所などに実施したい。
|