研究課題/領域番号 |
26285097
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
坂本 和子 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50379070)
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研究分担者 |
阿部 周造 横浜国立大学, その他の研究科, 名誉教授 (30060015)
木谷 庸二 京都工芸繊維大学, その他部局等, 准教授 (10299133)
河原林 桂一郎 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 名誉教授 (20387525)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デザイン・ポテンシャル / 国際比較 / 購買行動 / デザイン嗜好 / 生理指標 |
研究実績の概要 |
本年は昨年度実施した色や形、対称性、比率(黄金比等)などのデザイン認知に関する調査をもとに、デザイン・ポテンシャルの尺度開発を行った。いくつかのプレ調査の過程で対称性と比率には相関があり、モノの物理的捉え方が国により異なることが示された。加えてそれぞれの属性がデザイン全体の嗜好にどのような影響を与えるのか、また文化的背景によりどう異なるのかを検討した。その結果、他の調査対象国(オランダ、フィンランド、バングラデシュ、タイ、中国、韓国等)に比べ、日本は特筆すべき特徴を有していることがわかった。その独自性はアシンメトリーや白銀比志向に表れており、理由として「侘び寂び」、その後に登場した「綺麗さび」といった概念が、日本人の美意識の礎を築いてきたことが考えられる。そこで日本人の美意識や文化の実態をもう少し把握するため追加調査を行うこととした。 人がデザインの審美性を感じる際、情動反応、脳幹反射、辺縁系の反応、自律神経の亢進といった様々な生理反応が伴う。「美しい」と思える状況は「ドキッとする」などの感情が湧き出るものと、多くの人が認める審美性を受け入れる認知的なものがある。個人の感情に即しているのは前者の方であるが、態度や購買の段階で後者を優先する場合がある。ここでは他者意見に左右されない個人が思う審美性とデザインの関係を検討した。その際、従来の言語的または主観的な調査方法では、無意識的社会行動などの影響が強く反映されるため、心拍や呼吸などの生理的指標を用いての実験を計画した。具体的には、呼吸統制などの負荷を与えずに自律神経活動を定量的評価するためにトーン・エントロピー法を用いて、自律神経全体の活動レベルと交感神経・副交感神経の活動程度の2つの観点から評価した。結果は心臓自律神経の活動には変化はみられるものの、程度は低く生理学指標を用いた検出にはさらなる工夫が必要とされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は研究代表者の所属機関異動に伴い、業務が煩雑化したため研究エフォートが著しく減少したことが挙げられる。通常の調査活動やそこから導出すべきデータの収集分析が不十分であった。加えて主観的調査手法の限界から、生理学的指標を用いたアプローチを行ったため、研究テーマそのものより、調査手法や実験計画に時間を多大な工数を有したこともあり、研究があまり進展しなかったように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたデザイン・ポテンシャルの尺度については、現在までデザイン関与とデザイン認知について検討しており、残るデザイン感情に関する調査を残すのみとなっている。これについても、海外研究者との協力のもと、最終的なモデル開発と、知見導出を目指す予定である。 また、調査方法に関しても再度検討し、深度センサ等などを組み合わせるなどして、個人の生理的・心理的状況を考慮した分析を行っていく予定である。 研究成果を通して、製品開発におけるデザインを基軸とする新しいアプローチの可能性を見出すなど、学術・実務両面へ貢献したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関が異動となったため、業務負荷等による研究エフォートが減少し、研究の進捗が著しく遅れた。そのため、データ収集が不十分となり、共同研究者との打ち合わせ等にも支障をきたしたため、1年繰り越して研究継続を申請した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年としての本年は研究活動の不足を補うべく、データ収集と研究者ディスカッションに集中的に使用額を充てる予定である。
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