研究課題/領域番号 |
26285100
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
徳賀 芳弘 京都大学, 経営学研究科, 教授 (70163970)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 国際会計 / 比較会計 / 国際会計基準 / 会計インフラストラクチャ / 研究方法論 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来の国際比較会計研究および国際会計基準の経済的帰結を析出する実証研究の問題点を洗い出すとともに、当該問題を克服する新しい分析枠組みと分析方法を構築することを目的としている。平成26年度には、定量的および定性的な国際会計研究の包括的サーベイを行うとともに、新しい分析枠組み・方法論に関する基礎的な研究を行い、会計基準と会計インフラストラクチャの双方が規定し合い、共変化するという本研究の基礎的な分析枠組みを提示するにいたった。平成27年度は、上記の分析枠組みに関する妥当性について、ドイツ、ルーマニア、ミャンマー等の経済発展や政治的体制の異なる複数の事例に照らして検討を行った。具体的には、以下の通りである。 1.国際会計研究の文献リストの作成:2004年から2014年の間に、代表的な英文ジャーナルに掲載された国際会計研究の文献リストを作成した。 2.実証研究に関する検討:国際会計基準の経済的影響を関する実証研究では、多くが事前事後分析型の研究を行っているが、これらの研究には、導入効果と時間効果、また関連制度変更の影響を区別して析出できないという根本的な欠陥が指摘できる。同時に、このような欠点を克服するためには、DID分析が有効であることが分かった。 3.分析枠組みおよび方法論の検討:会計基準と会計インフラストラクチャの共進化という分析枠組みに関するメンバー間のコンセンサスがある一方で、具体的な分析手法に関しては、引き続き検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に、包括的なサーベイを中心に進める予定であったが、平成27年度以降の研究テーマであった新しい分析枠組みおよび方法論の検討を前倒しして進めた結果、先行研究の棚卸という点に関して若干遅れ気味であった。本年度、文献リストを作成することによって、一定程度の進捗があったが、近年量産されつつある定量的な分析にまでは至っていない現状である。 新しい分析枠組みおよび方法論の構築に関しては、サーベイの結果に基づいてどこに新規性があり、どのような点において有効性があるのか、より具体的に主張することが必要であるため、2つのテーマを同時並行的に進めていく必要性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
先行研究の整理に関しては、文献リストに基づいて、個別論文に関する詳細な検討を行ったのち、それらをメタ分析の手法に基づいて、分類および分析し、研究動向およびテーマの変遷、成果と研究上のギャップについて定量的かつ定性的に明らかにする。また、研究方法の整理に関しては、方法論における議論にとどまらず、具体的な分析手法としての有効性を先行研究と本研究グループによる適用によって、応用可能性や効果に関する検討を行う。さらに、新しい方法論および分析枠組みの構築に関しては、第一に、ポストコンティンジェンシー理論や新制度派経済学に基づいた会計基準と会計インフラストラクチャの共進化という枠組みを実証主義(コンティンジェンシー理論)の立場から批判的に検討する必要がある。第二に,より具体的な分析手法として、会計基準の適用方法や会計インフラの変化等に関する個別具体的な事例研究と会計基準の経済的帰結に関する経験的分析手法をどのように関連付けていくのか、理論的かつ実践的に検討していく必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた、オーストラリア・シドニー大学のS. Gray教授の招へい旅費等を、大学の別予算から支出することができたため、その分の次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次期繰越額は、28年度中に、以下の企画に使用する予定である。 研究計画上は当初予定していながら、採択の際に交付額が削減されたため、計画から除外していた、中規模(30~50人)のカンファランス(申請メンバーの数人による成果の報告会でもある)を京都で開催する。参加予定者は、申請メンバー全員(海外の申請メンバー3人を含む)、27年度の研究交流の中で本研究への協力を約束してくれた海外の研究者数人、および申請テーマに関連する研究領域の日本の研究者である。
|