研究課題/領域番号 |
26285102
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
古庄 修 日本大学, 経済学部, 教授 (90219113)
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研究分担者 |
沖野 光二 兵庫大学, 経済情報学部, 准教授 (00319906)
平賀 正剛 愛知学院大学, 経営学部, 教授 (00329070)
姚 俊 明治大学, 商学部, 講師 (00610932)
菊谷 正人 法政大学, その他の研究科, 教授 (10132101)
向山 敦夫 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (50200241)
中村 信男 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60267424)
古賀 智敏 東海学園大学, 経営学部, 教授 (70153509)
戸田 統久 近畿大学, 経営学部, 准教授 (70550052)
池田 公司 甲南大学, 経営学部, 教授 (80202886)
村田 英治 日本大学, 商学部, 教授 (90210038)
田代 樹彦 名城大学, 経営学部, 教授 (90268061)
島永 和幸 神戸学院大学, 経営学部, 准教授 (90362821)
越智 信仁 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (70758771)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 統合報告 / 財務報告 / 概念フレームワーク / IIRC / SASB / CSR報告書 / ESG情報 / 戦略報告書 |
研究実績の概要 |
本研究は、統合報告のフレームワークの新たな構築を目指して、(1)統合報告と財務報告は概念フレームワークを共有しうるのかという観点から統合の意味を検討し、統合報告と財務報告の境界問題および両者の連係の在り方と方法について考察するとともに、(2)統合報告の制度化の経路依存性に係る先行事例の調査・分析を通じて、統合報告の制度化をめぐる課題を抽出し、その成果に基づき、(3)統合報告と連係した日本版開示フレームワークを構想し、体系化することを課題としている。平成27年度は、特に上記目的(1)および(2)を中心に、以下のように報告書等にまとめるとともに、学会等において本研究の成果を発表した。 第一に、10月3日に専修大学で開催された国際会計研究学会において最終報告書『国際統合報告フレームワークの形成と課題―平成27年度最終報告―』を公表し、研究グループとして研究発表を行った。また、本研究の代表者古庄 修と研究分担者の古賀智敏ならびに中村信男は、10月23日に早稲田大学で開催された産研フォーラム(早稲田大学産業経営研究所主催)に登壇し、パネル・ディスカッションを行った。 第二に、本研究グループの研究分担者が以下の2篇の単著を上梓した。ひとつは、越智信仁著『持続可能性とイノベーションの統合報告―非財務情報開示のダイナミクスと信頼性―』(日本評論社刊、2015年3月)である。また、もう一つは古賀智敏責任編集、池田公司編著『統合報告革命―ベスト・プラクティス企業の事例分析―』(税務経理協会刊、2015年5月)である。本書の最大の特徴は、国際統合報告評議会(IIRC)のパイロット・プログラム参加企業を中心に、20社の海外企業のベスト・プラクティスの事例を綿密に、かつ具体的に分析し、わが国企業の統合報告書の作成に資する最適な教材を提供することを意図した点にあり、多様性のある統合報告書の作成・開示実態の全体像を示すものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、統合報告を制度化した南アフリカをはじめ、英国、東南アジア等の諸外国における実態調査と分析を踏まえて、学会発表および刊行物の公表に至る研究成果を公表することができた。当初より計画していた国際会計研究学会における最終報告書の公表と学会発表ならびに早稲田大学におけるシンポジウムの開催を実現したことは、研究分担者が精力的に本研究課題に取り組んだことの証である。また、上述のように、本研究課題を基礎として、研究分担者がそれぞれ2冊の単著を上梓したことも評価しうる点として付記しておきたい。 これまで、IIRCの『国際統合報告フレームワーク』に係る概念レベルでの研究および海外における統合報告のベスト・プラクティス企業の事例等の分析に重点を置いてきたため、上記研究課題のうちとりわけ(3)統合報告と連係した日本版開示フレームワークを構想し、体系化すること、については最終年度となる平成28年度の重点研究課題となる。 本研究課題をすべて網羅した研究成果のとりまとめに向けて、これに組織的に取り組むための役割分担を研究分担者はそれぞれ自覚しており、各研究分担者が所属する校務等の都合により海外出張が延期されたケースもあったが、おおよそ研究支援体制も十分に整っていることから、引き続き今後の研究を推進しうるものと思料する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、国際会計研究学会において公表した上記報告書『国際統合報告フレームワークの形成と課題―平成27年度最終報告―』の単著としての出版を目指し、その交渉を進めるとともに、これをさらに敷衍して、「統合財務報告制度」の視点を基礎とした統合報告の制度化のプロセスに係る国際比較研究、先行事例の研究を基礎とした報告体系の統合類型化等を網羅する。また、わが国における統合報告の制度化に向けた様々な取り組みに目配りしながら、日本版開示フレームワークの全体像を構想し、任意開示としての統合報告と現在の財務報告制度の連係の在り方および連係の方法等について、体系的な議論を研究成果に加えたい。 本年度は、昨年度の早稲田大学に引き続き、日本大学経済学部においてシンポジウム等の研究成果の公表機会を確保したいと考えており、現在、同経済学部産業経営研究所の後援の要請を含めた交渉その他の準備を進めている。 なお、本研究は、国際財務報告論の研究領域に位置付けて会計学研究を基礎とした独自の研究目的・課題として掲げてきたが、当初から経営学等の関連学会の研究者(ないし研究グループ)との相互交流も視野に入れてきた。こうした積み重ねを経て、将来的には、統合報告から「統合経営」への展開に係る本格的な研究を見据えたワンストップの統合報告研究の拠点づくりを構想するものであった。本研究におけるこれまでの研究経過は、会計学からの接近を基礎として情報発信と研究交流の呼びかけを行う際の重要な基礎的基盤となる。現状は、国際会計研究学会と知的資産経営研究学会の各研究グループの研究交流にとどまっているため、本年度は広く当該領域の研究に取り組む研究者(研究グループ)との連係や対話を進めていくことを目標として掲げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国および米国に調査出張を予定して研究分担者が学内の役職その他校務のため、または体調不良等を理由として、執行残が生じたたためである。また、国内で実施した研究会の開催時に、校務等を理由としてやむをえず欠席せざるをえない状況もあり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外実態調査の一環として、英国の調査については昨年度他の研究分担者によりベスト・プラクティス企業の事例研究が実施されたが、本年度は統合報告の制度化に係る調査に重点を置いて執行したい。また、米国をめぐる動向、現状把握については、十分に捕捉されなかったため、改めて本年度に調査研究を行うために使用したい。 また、国内旅費については、出版に向けた打合せおよび本年度のシンポジウム等の研究報告のために現在その企画の詳細を検討するための研究会開催において使用する。その他、シンポジウム開催時の配布資料等の印刷等のために使用したいと考えている。
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