研究課題/領域番号 |
26285110
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹辺 宣彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90212125)
|
研究分担者 |
中村 麻理 名古屋文理大学, 健康生活学部, 教授 (60434635)
山口 博史 都留文科大学, COC推進機構, 准教授 (70572270)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 産業都市 / 地域的紐帯 / 市民活動 / 多文化共生 / エスニシティ / グローバル化 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、27年度に実施した質問紙調査・インタビュー調査をもとに、補充調査をおこないつつデータを集計・分析し、保見団地の調査報告書と、豊田市(旧市内)全体に関する成果報告書を研究組織・グループで作成する作業に注力した。保見団地に関しては、日系ブラジル人、日本人住民双方のデータを得ることができたので、二つのエスニック・グループの比較・集団間関係まで視野に収め、定住層の地域的紐帯やまちづくり参加のデータを分析することができた。豊田市全体については、2009年調査の結果を基本的には再度裏付ける結果が得られたが、同時に、未婚化、少子化、非正規化といった人口学的・社会経済的な諸条件の関連要因が短期間のうちに明確に変化していて、従来のトヨタ的地域秩序を少しずつ浸食していることが明らかになった。 こうした成果は、二冊の調査報告書(『「豊田市のまちづくりと市民活動に関する調査Ⅱ」報告書』・『外国人集住地区のコミュニティ形成と国際化―保見団地の現在―』)に刊行され関係者・関係団体、市役所に配布された他、著書論文2篇、雑誌論文2編(東山地区の社会移動・地域的紐帯に関する論考)、学会報告3件、公開研究会講演1件等で発表された。調査の結果が注目され、『社会と調査』誌(社会調査士協会刊行)からは調査実習紹介というかたちでその経緯を寄稿するよう依頼も受けた。 保見調査の結果については、団地集会所で地域住民向けの報告会をおこない成果を還元した。地区のイベント「ほみにおいでん」には、ゼミの学生がボランティアで運営を手伝った。また豊田の報告書については、研究代表者の研究室HP上でも成果が公開された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、前年度に三つの質問紙調査(豊田市全体、東山地区、保見団地)を実施したのを基に、データの解析を進め、前年度末(東山地区の調査報告書)に続いて、秋に保見の調査報告書、年度末に豊田全体の成果報告書を刊行することができた。内容面では、豊田市の人口学的・社会経済的条件の変化が、従来のトヨタ的地域秩序を浸食しつつあることを明らかにし、保見団地については、外国人・日本人住民双方に質問紙調査を実施し集団間関係を明らかにするという得難い成果を上げることができた。 著書・論文の刊行、学会報告で学術的成果を刊行した他、調査報告書の配布、住民向け報告会の実施など、社会貢献の点でも成果を上げることができた。豊田報告書の刊行についは中国側研究協力者2名も執筆者に入れることができた。ただし、日中関係の緊張にともない、中国側のビザ手続きが厳格化され、残念ながら、予定した時期に招聘することができなかったことは惜しまれる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度に当たるため、蓄積してきたデータ、これまで刊行した3冊の調査報告書を基にして、学術雑誌への論文執筆、学会報告等を引き続きおこなっていきたい。保見団地の調査が実施できたことで、世界的な産業都市地域の公共空間の特質を明らかにするという研究課題に、多文化共生という論点を織り込んで研究・調査活動を展開していきたい。最終的には、豊田全体のデータを背景に、保見団地と東山地区という二つのコミュニティにフォーカスを当て、専門書を刊行する予定で、現在出版社と調整に入っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
日中関係の緊張にともない、中国側研究者のビザ発給要件が厳しくなり、予定していた時期に招聘できず、結果的に年度内に招聘することができなかった。反対に、保見調査については団地側まちづくり団体の依頼で急遽質問紙調査を実施することになり、回収郵送費、報告書印刷費が必要となり、予定額を若干上回った。旅費使用額が予定額を大幅に下回ったため、次年度使用額が生じたものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度については、当初予定通り研究成果の公表を精力的に進めていく他、今後の協力も睨んで中国側研究者との意見交換、調整をおこないたい。8月から9月にかけて、前年度の豊田調査報告書に執筆した吉林大学、長春工業大学の研究者を招聘したい。そのための費用を旅費に計上した。
|