研究課題/領域番号 |
26285113
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安立 清史 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (40192968)
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研究分担者 |
高野 和良 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20275431)
黒木 邦弘 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (60369832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護保険 / 社会福祉法人 / NPO法人 / 非営利法人 / デルファイ法 / 社会貢献 / 新地域支援事業 / 社会福祉法改正 |
研究実績の概要 |
介護保険改正により、厚労省は介護保険の中の要支援1・2を、新地域支援事業という市町村事業に変えていく。これは、介護保険財政の逼迫をうけて、介護保険の中の大きな事業組み替えであり、介護老人福祉施設を経営する社会福祉法人のみならず、居宅介護支援事業などを行う非営利法人(社会福祉法人・生協・JA・NPO等)にも大きな影響を与えるものである。また新地域支援事業へのスムーズな移行には非営利法人との連携や協働などの対応がきわめて重要な課題である。われわれは、NPO法人市民福祉団体全国協議会とともに、全国のNPO法人等の新地域支援事業への対応を調査してきた。また福岡県老人福祉施設協議会とともに、施設長の介護保険改正への意識調査等を行ってきた。後者は福岡県老人福祉施設協議会加盟の217の特別養護老人ホームの施設長へのデルファイ法にもとづくアンケート調査として実施した。デルファイ法による第1回調査をふまえて年度内に第2回の調査も実施した。これらの調査結果は、九州大学人間科学紀要に3つの調査報告論文として掲載される。要約すれば、NPO法人などの非営利法人は新地域支援事業に積極的だが、市町村のこれらの非営利組織への認知との間にギャップがあり、新地域支援事業のスムーズな移行と進捗に支障をきたしている。特別養護老人ホームなどは社会福祉法の改正も重なり社会貢献・地域貢献を迫られているが、社会福祉法人とその他の非営利法人(生協・JA・NPO等)との連携や協働はまだ始まっていない。こうした制度の狭間や非営利法人間の連携や協働可能性についての課題が明らかになったので、最終年度はこれらの問題に焦点を絞って調査研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、NPO法人・市民福祉団体全国協議会とともに、全国のNPO法人等の新地域支援事業への対応を調査してきた。福岡において非営利法人(社会福祉法人・生協・JA・NPO等)を集めて新地域支援事業への対応を協議する研究ミーティングも実施した。また福岡県老人福祉施設協議会とともに、老施協加盟の全217施設、すべての特別養護老人ホームの施設長への郵送法にもとづくデルファイ法アンケート調査「特養のあり方に関する未来予測調査」を二度にわたって実施した。これらの調査結果とその分析は、九州大学人間科学紀要に3つの共同調査報告論文として掲載される予定である。このように、調査研究は、順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のデルファイ法による社会福祉法人施設長調査やNPO法人調査などをふまえて、今年度は、以下の調査研究を行う予定である。第1は、介護保険改正による非営利法人(生協・JA・NPO等)の対応を調べるため、市町村で行われる「新地域支援事業」への非営利法人の対応を調査研究していくことである。これには、NPO法人・市民福祉団体全国協議会や福岡県老人福祉施設協議会の協力なども得ながら進めていく。第2は、社会福祉法改正に伴って行われることになる社会福祉法人の社会貢献・地域貢献事業についての具体的な調査研究である。介護保険改正と「地域包括ケアシステム」の導入によって、介護保険における社会福祉法人の位置づけや役割が微妙になってきている。社会福祉法人としては介護保険事業者としてではなく、社会福祉を推進する中心的な担い手としてありつづけることが出来るかどうかの正念場に立たされることになる。しかしながら、社会福祉法人の行う「社会貢献・地域貢献」とは何か、まだメニューがいくつか示されているだけで、どの程度実施されていくのか、具体的な調査研究はまだない。介護保険改正と社会福祉法人の対応とも関連させながら、社会福祉法人の社会貢献とは何か、理論的および実証的な調査研究としていく。具体的には、海外の非営利セクターとの比較なども行いながら、大規模団地での新たな福祉ニーズ(NORC現象)と社会福祉法人や非営利組織との関係、限界集落などでの社会福祉法人の対応の可能性などを調査研究していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度には、これまでの研究成果を公開するため、研究成果の報告書の作成や、国内の研究者や海外の研究者との調査研究成果について討議する研究者交流を予定している。その旅費やシンポジウム費用などに、予算を振り向けるため。
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次年度使用額の使用計画 |
報告書の作成費用、旅費およびシンポジウム開催費、会場費、人件費などにあてる予定である。
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