研究課題/領域番号 |
26285121
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 守 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30232474)
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研究分担者 |
水嶋 一憲 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (20319578)
毛利 嘉孝 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (70304821)
阿部 潔 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90242156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コミュニケーション資本主義 / 情動 / ソーシャル・メディア / ナショナリズム / 政治的公共性 |
研究実績の概要 |
これまで6回にわたる研究会を開催し、テーマ「デジタル時代における政治的公共性とナショナリズム」に関する研究を進めていく上で重要な論点について議論した。第1回:それぞれの問題関心の提起、第2回:伊藤報告ではネット環境の拡大は一方で公共圏の多元的拡大を示しつつ、他方で感情動員型の色彩を強め、ナショナリズム的な言説の起点となっている点など、ソーシャル・メディアの社会的特性に注目すべきこと、第3回:北野・阿部報告では現代のナショナリズムを考えるうえで「制御社会化」「管理社会」の問題との関連性について、具体的には「制御」や「監視」を欲望する主体とナショナリズムの親和性が見られることが議論された。第4回:岩渕報告では韓国・台湾・中国との関係で潜在的な社会不安が昂進していること、それと並行して日本社会や日本人の優れた点を語る言説の増大について具体的な事例から報告がおこなわれた。第5回:毛利報告:マスメディアの動向を検証するなかで、特定の新聞に対するバッシング、テレビの原発事故報道に関する政府機関からの圧力、放射能汚染と健康被害に関する報道に対する自主規制に向けた圧力など、既存のメディアがこれまで担保してきた公共圏が縮小していること、さらに岩渕報告と同一の視点からオリンピック開催とのかかわりで被災者や避難者の声を排除して「絆」「コミュニティ」といった一体性を強調する動きが拡大していることが指摘された。 この議論を通じて、今年度は、新しいメディア技術環境とコミュニケーション資本主義の特徴をより精緻に分析すること、不安と監視をめぐる社会意識と情動のかかわりに関する新たな分析枠組みを構成することを試みながら、具体的な焦れの検討を行っていくことを課題とすうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は研究分担者ならびに研究協力者との問題関心の共有と分析視点の相互理解を進めることを第一の課題にしてきたが、その点ではそれぞれの関心・視点が相互に関連し、生産的な議論を積み重ねることができたといえる。ただ、初年度から国際的研究交流を通じて、各地域の政治的公共性とナショナリズムの変化を捉えることを予定していたが、それは時間的にかなわなかった。ただし、すでに2015年度の早い段階で韓国の研究者2名をお呼びして、研究交流を行い東アジア圏における動向を検証する手はずになっており、国際的な視野から研究テーマを考える方向ができつつあることを述べておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、東アジア圏の研究者とのシンポジウムないしワークショップを開催(とくに、台湾、香港などの学生運動の盛り上がりとのかかわりで政治的公共性の在り方の変化の問題を考察)、ヘイトスピーチ等ナショナリズム的動向についての研究を行っている研究者を招き、相互の議論の場を確保すること、文化芸術の分野における問題に視野を広げて検討を加える、という3つの領域を設定して、新しいメディア技術環境とコミュニケーション資本主義の特徴、安心・安全と監視をめぐる社会意識や情動のかかわり、を具体的に検討することで研究を推進していく予定である。
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