研究課題/領域番号 |
26285125
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
|
研究分担者 |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
江川 直樹 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (20388416)
高瀬 武典 関西大学, 社会学部, 教授 (90187956)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | スマートエイジング / 団地 / 高齢化 / 少子化 / シェアリングエコノミー |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度の研究結果を前提に、若年層との世代間連携によって団地高齢化の問題を超克する可能性をさぐるために、以下を行った。まず第一に、前年度までの若年層、特に、小学生の子供を持つ母親を中心とした聞き取り調査から、高齢者への聞き取り調査へと調査対象を展開し、それらをテキストデータとして作成した。第二に、これらの聞き取り調査の結果に対して、MaxQDAという質的データ解析支援ソフトを用いたタグ付け作業を行い、聞き取り内容の分節間の関係の整理、近接性の分析などができるような加工を行った。第三に、こうした質的分析の結果から見えてきた事柄に基づいて、高齢者から高齢者、高齢者から若年者への一方通行的な支援状況となっている状況をモデルとして整理した。さらには、同じデータから支援者である高齢者は若年者との連携を望んでいることも明らかになってきており、両者の連携モデルのプロトタイプを作成した。第四に、質的データ解析の内容から明らかになった団地における高齢者層、若年者層の不満を整理したところ、車の維持、交通をめぐる不便さといった移動手段をめぐる問題の改善が喫緊の課題であることが分かり、この問題をシェアリングエコノミーの枠組に位置付けて整理した。最後に、対象地域で現在行われている現行の「買い物支援サービス」ボランティアと、車のシェアについての可能性を具体的に法令に照らして整理し、具体化が法令上可能と考えられるモデルを構築した。この買い物支援+車のシェアのモデルを、対象地域の現自治会長、全自治会長、行政の担当者に対して提示し、意見交換を行った。結果、モデルとしても、また、地域の協力体制としても、平成30年度にこの仕組みを具体的に導入するという社会実験の準備が整い、当初計画の「スマートエイジング事業の新しい展開」への見通しが立った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究計画段階から、調査とその分析に終わるものではなく、地域課題の具体的解決に向けた取り組みを計画してきた。本年度の進展は、社会調査にもとづいて、社会課題解決のモデルを構築するところまで来ており、この研究計画の実現という点からは、研究の進展は順調といえる。また、前年度までの質問紙調査データを中心として計量社会学的分析から、MaxQDAを用いた質的研究に展開することができ、方法的な展開があったばかりでなく、量的な分析結果と質的研究結果を照らし合わせることで、対象地域の課題がかなり明確に明らかになってきた。こうした混合的な手法による地域状況の把握によって、解くべき課題は移動手段をめぐる問題であることが把握できたことも本年度の成果であり、この点も、当初計画からして順調なものといえる。一方、新しいプランの実施についての地域、行政との意見交換、調整は時間を要するものとなっており、当初計画の実践を翌年度に先延ばしすることになった。この点では、当初予想よりも遅れているといえる。ただし、総合的にみて、研究計画時の具体的な地域問題の解決という方向に着実に進展していることから、おおむね順調に進展しているとしている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度が最終年度となるが、本年度に関しては、以下の方向で研究を推進する。 1)自治会、行政と連携し、シェアリングエコノミーのアイデアを取り入れた「コミュニティ・アテンダント・サービス(略称:CAS)」を実現する。このために、前半において、自治会とのやりとりを綿密に行う。 2)前記1)の遂行の過程で得られた情報に対して、質的分析を行い、その内容を含みこんだ再調査を計画する。 3)再調査は、前回の調査からの住民意識の変化に加え、CASの効果を測定できるよう小規模調査を複数回実施する。 4)こうした調査の裏付けをもって、CASの効果を地域還元するとともに、地域内でのCASの知名度を上げ、世代間連携の促進を図る。 5)中規模の調査を最後に行い、こうした新しい取り組みによって、世代間連携意識や若い世代の子育て、出産意識の変化がどう変化したかを把握する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実践的研究の進展と、その実施にかかわる準備のために、一年の延長を申請し認められているが、この実践研究の効果を測定する目的で複数回の社会調査を計画している。そのために、次年度使用額が生じている。
|