研究課題/領域番号 |
26285131
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
北川 慶子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (00128977)
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研究分担者 |
羽石 寛志 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (30363419)
三島 伸雄 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60281200)
榛沢 和彦 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70303120)
岡本 竹司 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70540425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 雑魚寝式避難所 / DVT検査 / 健康被害 / 防災デザイン / エアマットレス / 複数避難路 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
<研究概要> 災害時の避難所の雑魚寝がもたらす健康への影響と二次健康被害の防止指標の開発研究は、平成26年度において、特に被災者を中心とする健康診査(DVT検査)と避難所の質を検討するための生活調査および防災意識を捉えることとし、避難路研究をあわせて行った。雑魚寝式避難所は、日本と韓国だけであるため、そのデータを収集し、雑魚寝解消の試みとして、ベッドへの移行過程としてマットレスの利用とそのマットレスのデザインを考案し、施策する準備を行った。 <研究内容> 2014年広島豪雨土砂災害避難所におけるDVT調査では、男性のDVT陽性率5.4%、女性12.2%であった。一般住民対象の同検査では、陽性率はそれぞれ4.0%、4.4%であったことから、避難所では災害の種類によらずDVTが増加し、女性がより多く発生し、避難所環境と関連することが示唆された。避難所環境が雑魚寝形式である韓国と日本では、避難所の場所は教育機関の体育館であり、ビニールもしくはアルミシートに毛布というほぼ同一形式であることが実態調査により捉えられたため、避難所での健康被害防止策としてのマットレスデザインを考案し、施策段階に入った。一時避難所の雑魚寝に対し、エアマットレスを避難施設に常備すれば避難が中長期に及んでも常に使い続ける事になる。エアマットレスは、収納にもスペースをとらないため、飲料水、食料、毛布に次いで用意すべきものであり、避難所の最低限の機能とすることにより雑魚寝解消意識の普及につながり易いのではないかということが示唆された。高齢化率の高い地方都市(日本の災害被災定率地域)の避難路調査では、ようやく複数経路の確保が必要であるという認識が浸透してきつつあるが、高齢者が多く居住する地域ほど狭小な道路と古い家屋であるために避難が困難である。現状では、第3、第4の避難路という意識はないということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DVT調査は、2005年から実施している研究者を研究分担者としており、2012年から雑魚寝解消活動を研究分担者らと共に実施してきており、さらに避難所研究は、過去に社会福祉施設の用援護者の避難判断の研究実績を有するためにそれを地域住民の複数避難路研究に参照することができたことにより、本研究は順調に推移している。 特に、健康被害に関する調査が進展したのは、広島豪雨土砂災害の発生により、その避難所が雑魚寝式であり、ダンボールベッド450台を民間の支援により配置できたことで把握することができたことにもよる。また、韓国の防災デザイン研究者(2014年度韓国ICCC防災デザイン賞受賞)の研究協力を得たこと、本研究へのエアマットレス企業(旧科技庁長官賞受賞)の研究協力を得たことにより、避難所の雑魚寝解消のための長期対応エアマットレスの開発のが可能となったことは、本研究を計画以上に進展させた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の調査研究で明らかになった避難所の雑魚寝が健康にもたらす要因を更に分析し、被災リスクの低い地域の住民健康・生活調査を実施し、比較分析を行う。平成28年度の最終目標である「雑魚寝式避難所の解消の指標作成」に向けて、避難所が具備しなければならないことについて検討を行う。 具体的には、① 避難所の雑魚寝形式の維持要因を、世界で始めて<雑魚寝式の避難場所>が健康に影響を与えるとしたとされるイギリス(ロンドン)の研究をはじめとして、関東大震災以降、90余年の歴史を有する日本の避難所のあり方の歴史的研究成果の収集・分析をはじめとして、日本と同様の雑魚寝形式の避難所としている韓国の実態を捉える。さらに、現地研究者と共に避難所の質が、避難者の健康の質を左右することになるであろうことを本研究の成果を基に避難所のあり方を共に質的研究として実施していく。②平成27年度において、避難所の質を問うことに関連し、必要となる健康診査・生活調査は実施するものとする。③本研究の実施により、防災デザイン分野の研究者とエアマットレス企業の研究協力を得たことから、避難所に必要となるダンボールベッドとエアマットレスを防災用品としての機能、収納スペース、数、価格、などの比較も合わせ、比較検討する。一時避難所のあり方と健康リスク、中長期的な避難所での生活と利便性、耐久性、健康への影響度等を勘案して、段ボール製ベッド・エアマットの使用頻度と期間による適正度を明らかにする。④継続して災害に応じた(自然災害の種類、火災)多様な避難路を考案する。 最終的には、わが国のみならず、自然災害の多発するアジア諸国で、その他世界各地の自然災害に対応でき、健康被害を最小化する避難所のあり方を提言できる成果を創出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が、2回の海外被災地(北イタリア)での被災者健康調査(DVT検査)を実施する予定であったが、広島豪雨土砂災害の発生により、調査地を国内(広島市)に切り替えたために、海外調査をする日程が取れず、したがって、次年度使用ということになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施できなかった海外との比較調査のための北イタリアにおける健康調査は、平成27年度7月(北イタリア・ラクイラ市およびモデナ県)に実施を予定している。
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