研究課題/領域番号 |
26285133
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
西田 恵子 常磐大学, コミュニティ振興学部, 教授 (50464706)
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研究分担者 |
砂金 祐年 常磐大学, コミュニティ振興学部, 准教授 (00433574)
呉 世雄 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 講師 (00708000)
近江 宣彦 常磐大学, コミュニティ振興学部, 准教授 (20321317)
名和田 是彦 法政大学, 法学部, 教授 (30164510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LARA / 救援 / 戦後福祉改革期 / 民間活動 / ACVAFS / CRALOG / KAVA |
研究実績の概要 |
研究期間3年目にあたり、70年余を経てLARAおよびララ救援物資の日本社会における伝承に誤認が散見される状況をひとつの問題としてとらえ、ララ救援物資の発足経過を原資料をもって明らかにすることをひとつの目標として研究を進めた。 第一に、2015年度にアメリカ公文書館で収集したGHQ文書の整理分析を行った。①日本・琉球(沖縄)・韓国へのララ物資配分量の時系列整理、②ララの運用に際するGHQの関与などの解明に努めた。第二に、2015年度に続いてアメリカ公文書館で資料収集を行った。LARAを設置したACVAFSが先駆けて設置したCRALOGの資料を閲覧することができた。一方、韓国における救援活動の資料を新たに見つけることはできなかった。第三に、国内におけるララ物資に関わる資料及び情報の収集を進めた。①LARAの構成団体の多くはキリスト教団体であった。国内キリスト教団体の一部ではララ物資を海外救援活動のひとつの象徴として、その精神と活動の意義を継承することに配意している。ただし現在確認できる所蔵資料は多くなく既刊書籍など二次資料にとどまる。②LARAを継承したCACの配分事務に携わった人物のヒアリング調査を行い、LARA代表のローズの関わりの大きさ、全社協の関わり等を把握した。③ララ物資を始めたのは日系移民のA氏であると主張する親族による冊子を確認し、その内容が二次資料で構成されていることを把握した。第四にアメリカ、ニューヨーク日系人会でヒアリング調査を行った。①戦後、会の再結成にララの活動を活用したこと、②ニューヨーク日系人会が収集した物資はフレンド財団を通じて送ったこと、③戦中戦後に渡って収容所に送られることはなく在宅で過ごした日系移民がいたこと、などを把握した。第五にドイツにおける戦後民間救援物資の研究の全体像を描くため、ゾンマーとエンズの文献を照合し資料状況を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、第2次世界大戦後、疲弊した日本への支援として送られたララ救援物資の配分と受給をめぐる事象をもとに、戦後福祉改革期の公私協働の実態を明らかにすることを目的としている。 多くの国民が生活困窮に直面する状況下、ララ救援物資の配分先は、ララ中央委員会と厚生省との検討により要援護者、社会福祉施設等に設定された。国内においては厚生省、都道府県行政、市町村行政(のちに)、社会福祉施設等を介して要援護者の手に渡った。一方、物資を提供する側においてはLARA、LARAの母体組織であるACVAFS、LARAの構成団体、救援物資を集めて届けたアメリカ市民、日系移民がいるとともに、GHQ、大統領府、各省の関わりがあった。LARAの全容を明らかにするには、多主体の把握と分析が必要である。 戦後70余年となり、時間の経過により資料の廃棄、散逸、証言者の逝去等が重なり、原資料の収集と把握が叶わなくなる状況が進む一方、時間を経たことによって明らかにされる証言や見解、公表される資料、整備されるアーカイブなどが出てくる状況もある。研究の全容の大きさを勘案し、入手できる資料及び情報へのアクセスを優先することとして研究を進めている。 アメリカ国立公文書館においてLARA、GHQに関わる資料を収集することは本研究において当初から重要な作業課題であった。今年度はCRALOGの資料を収集するという大きな成果を得ることができた。また前年度、アメリカ国立公文書館で収集した資料の整理、解読、分析に着手することもできた。またキリスト教団体のLARAへの関わりについてだけでなく、日系移民のララ救援物資との関わりについても把握と検討に着手できている。 国内においてはCACの実務に関わる証言を得ることができ、ララ救援物資の配分に関わる運営実態の一部を把握、理解するとともに、LARA後の状況への関心を広げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に資料及び情報の収集を引き続き進める。原資料の収集を基本とするが、二次資料の収集も行う。二次資料は原資料や実態との整合性、乖離の把握を行うとともに、乖離の場合はその要因を検討する。収集の柱は次のとおりである。①ララ代表の一人であったE.B.ローズの資料、②ニューヨーク日本人会の戦後救援活動に関わる資料、③LARA構成団体のララ救援物資に関わる資料、④韓国における救援活動の資料、⑤ドイツにおける救援活動の資料、⑥国内社会福祉施設等のララ救援物資に関わる資料。 第二に収集した資料の整理を行う。①収集資料のデジタルデータ化、②分類コードの検討、③目録の作成、が主な内容である。資料のサマリーの作成が必要なことは明らかだが、本研究期間中に行うことは難しいと見込んでいる。 第三に収集した資料をもとにした分析と検討である。①日本におけるララ救援物資の配分の経過、配分の運営管理と関係主体の動向。②韓国における救援物資の配分の経過、配分の運営管理と関係主体の動向。③ドイツにおける配分の経過、配分の運営管理と関係主体の動向。④キリスト教団体の海外救援活動の展開過程、⑤移民と母国救援活動の展開過程。⑥社会福祉制度の整備過程と救援活動の展開過程との関わり。検討課題としてこれらを想定している。さらに、これらをふまえて、戦後福祉改革期の公私協働の実態についてACVAFSを母体とした救援組織を研究対象として日本、韓国、ドイツの比較検討を行う。このことを通じて、危機下における公私協働の可能性と、公私協働に内在する問題の抽出、公私協働を成立させる要件について検討する。 LARA及びララ救援物資に関わる研究の全容は大きなものである。本研究はその一里塚となる役割を担うと考えている。そのことから報告書の編集・発行を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査を次年度に繰り越したことが大きな理由である。ドイツ調査を効果的に行うためには、救援活動を展開したアメリカ側の所蔵資料を参考に企画、実施することが必要だと、研究計画を見直したことによる。また、2015年、2016年のアメリカ国立公文書館における所蔵資料の状況や資料収集の成果から、アメリカにおいて継続して資料を収集する必要をとらえた。その経費の確保のために国内調査の規模を縮小した。これらの研究活動の展開に沿ってアルバイトの雇用を抑制したことも使用額に残金が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカにおける補足調査を予定している。2015年度、2016年度にアメリカ国立公文書館等においてLARAに関わる資料を収集したが、本研究の展開にはさらにLARAはもとよりACVAFS、CRALOG、KAVA、CAC等に関わる資料の収集が必要であり、ララ三代表のローズ、マキロップ(のちにフェルセッカーに交代)、バット及びその所属する教派の所蔵資料の収集が求められる。日系移民のララ救援物資との関わりを把握できる資料の収集も重要であり、アメリカの日系人組織を訪問し所蔵資料を閲覧、収集する。ドイツにおける調査も予定している。2016年度に実施できなかった調査を年度を繰り越して行うものである。日本との比較を可能とする資料の収集とキリスト教団体の戦後救援活動に関わる資料の収集を目的とする。また、収集した資料の整理をアルバイトを雇用するなどして進める。
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