研究実績の概要 |
平成28年度は課題2「後期高齢者のライフ・コースとライフ・チャンスに関する日瑞二国間」の最終比較分析を行った。使用したのは日瑞両国の縦断面接調査(日本:日本大学「健康と生活に関する調査」開始1999年)とスウェーデン:Swedish National Study on Ageing and Care,開始2001年)。調査対象者(77-79歳、日本878名、スウェーデン1100名)を10年間(日本1999ー2009年、スウェーデン2001ー2011年)追跡した。 主な結果として、将来のライフ・チャンスは後期高齢者の初期状態(機能障害及びケア・ニーズ・要介護レベル)に依存することが明らかになった。78歳時に機能障害や要介護ニーズを有しない高齢者は、機能障害と要介護ニーズを有する高齢者に比べて、その後10ー15年間生き延び、生存の可能性は著しく高い。 また、先行研究結果と同様に本研究においても女性の死亡率は男性に比べて低いものの、機能障害と要介護ニーズの進行は男性よりも早く、加齢のパターンも男女間で異なった。機能障害との関係における死亡率は二国間でほぼ同じであり、機能障害が生じる割合も同様であった。給付サービスを見ると、スウェーデンの高齢者よりも日本の高齢者の方が施設ケアを離脱する割合が高かった。スウェーデンでは、施設ケアから在宅ケアに移行することはほぼ皆無であった。二国間の違いは、医療及び介護サービス制度の相違にあり、日本では病院において死亡する高齢者の割合(80%)が高いのに比べて、スウェーデンでは自宅あるいは特別住宅において死亡するのが通常である。両国の統計上の処理も異なり、日本のデータセットでは病院医療は「非介護サービス」として登録されるが、スウェーデンの場合病院において死亡する高齢者(約10%)は要介護サービス受給者として登録される。
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