研究課題/領域番号 |
26285138
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
斉藤 雅茂 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70548768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会福祉関係 / 高齢者 / 社会的孤立 / 孤立死 / 地域環境要因 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる今年度は一定のデータセットが整備されたため、連携研究者と協力して、①孤立死事案の二次分析、②孤立軽減にむけた実践プログラムの評価、③孤立の地域環境要因についての分析を進めた。 ①については、複数の二次分析に着手したが、なかでも全国の地域包括支援センターを対象にした公益社団法人あい権利擁護支援ネットによる「セルフ・ネグレクトや消費者被害等の犯罪被害と認知症との関連に関する調査研究事業」調査データを使用し、いわゆる複合問題型のケースよりも、むしろ拒否・孤立型のケースがより深刻な状態や孤立死に至るリスクが高いことを示唆する結果が得られた。 ②については、24時間対応型生活支援事業による支援業務の内容を再整理するとともに、1年間の支援業務データを蓄積・収集することができた。並行して、特定の自治体において社会福祉協議会による見守り活動のプロセス評価に着手し、少なくとも当該地域では、独居者のなかでも男性、離別ないし未婚の人、居住年数10年未満の人、友人等との交流頻度が週1回未満の人などが本サービスの利用に至りにくい傾向にあり、サービスへのアクセスや周知・提供方法などの改善が必要であることが示唆された。 ③については、JAGESプロジェクトと連携し、702学区・包括区、123,760名の大規模データの分析に着手した。閉じこもりや社会的孤立の割合に関して、小地域単位での相当な散らばりが存在していることが確認されたため、今後、地域環境要因に関する探索的な分析に着手する。並行して、地域環境要因を表す指標として、健康関連ソーシャル・キャピタル指標の開発にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は6回、共同研究会を開催し、連携研究者と情報共有を図りながら、本研究を推進することができた。その成果として、連携研究者と協力し、学術論文を5本(うち査読あり3本)、学会等での報告を3本(うち招聘あり2本)を行うことができた。 第1に、高齢者の社会的孤立の帰結・事後と考えられる「孤立死」事案の特性に関しては、既存の調査データを収集・精査し、二次分析として進める計画であった。今年度は公益社団法人あい権利擁護支援ネットが2014年10~11月にかけて全国の地域包括支援センターを対象に収集したセルフ・ネグレクト状態にある高齢者の1,355事例(うち孤立死7.8%)について分析することができた。 第2に、高齢者の社会的孤立に対する介入・支援の分析・評価に関しては、先進的な実践事例である兵庫県芦屋市の24時間対応型LSAによる生活支援内容の「見える化」に向けた実践データベースを構築・導入することができた。これにより、業務実績データの収集・蓄積が可能となり、日々の見守り、生活支援の記録データを蓄積できる環境が整備された。また、こうした実践データベース構築の意義および生活支援業務の内容に関する基礎的な整理を行った。並行して、他地域において、主に独居高齢者を対象に行われている地域住民による見守り活動の実績に関する分析にも着手することができた。 第3に、社会的孤立の予防にむけた地域環境要因の解明に関しては、当初の予定通り、JAGESプロジェクトからデータ利用の許可を受けることができた。これにより、2013年に行われた全国31市町村、702学区・包括区、123,760名という大規模データの分析に着手することができるようになった。社会的孤立の割合に関して、小地域単位での相当な散らばりが存在していることが確認されたため、今後、地域環境要因に関する探索的な分析に着手する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前述した②と③について連携研究者とともにさらなる分析を進め、成果の学会発表・論文化に取り組む。また、①と③に関連して高齢者へのパネル調査を実施する。 (1) 昨年度までに社会的孤立軽減にむけた生活支援の先進的な実践として、兵庫県芦屋市の高齢者向け公営住宅に配置された24時間対応型ライフサポートアドバイザー(LSA)事業や愛知県豊橋市の独居高齢者への見守りボランティア事業などについて、実践データを収集・蓄積することができた。とくに前者については生活支援実績データベースを開発し、日々の見守り・生活支援の記録データを蓄積できる環境が整備された。今後はこれらのデータ解析に着手し、生活支援の内容と意義を分析し、孤立軽減効果を考察する。 (2) JAGESプロジェクトと連携して2013年に行われた高齢者を対象にした大規模調査(約12万人、77市区町村、702学区・包括区)から、国勢調査や各種統計、地理情報システム(GIS)なども考慮して、小地域単位での高齢者の社会的孤立等の集積性や小地域・市町村単位での社会的孤立の多寡と関連する地域環境要因、個人要因を調整した上で高齢者が孤立しやすい地域環境要因に関する探索的な分析を試みる。本分析の推進についてはJAGESプロジェクトでも了承が得られており、データも受領している。 (3) 前述の①と③に関連して、継続的に不利な状態にある層や社会的孤立が軽減した人々を把握するため、JAGESプロジェクトと連携して、2010年に実施された調査の回答者(高齢者、約28,000人)に対して、その6年後となる追跡調査(パネル調査)を実施する。なお、当該調査は、各自治体の介護保険事業計画策定にむけたニーズ調査の実施と合わせて行う。また、調査票は研究チームが作成するが、調査の実務的な作業(サンプリングから実施、データ入力など)では外部機関に委託する。
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次年度使用額が生じた理由 |
LSA事業の生活支援実績データベースの保守管理費用が予定より低く抑えらえれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、継続的に不利な状態にある層や社会的孤立が軽減した人々を把握するため、JAGESプロジェクトと連携して、2010年に実施された調査の回答者(高齢者、約28,000人)に対し、追跡調査(パネル調査)を実施する。その調査費用に充てる予定である。
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