研究課題/領域番号 |
26285144
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、 |
研究代表者 |
飯田 直樹 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 学芸員 (10332404)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 方面委員 / 部落 / 警察 / 米騒動 / 南王子村 / 貯金 / 部落改善 / 就学督励 |
研究実績の概要 |
大阪府警察部は、米騒動後の大正8年(1919)3月12日に、府内7ヶ所の被差別部落および部落出身者集住地区に出張所を設置し、この出張所に部落事務員として警部補か巡査部長を家族とともに居住させ、部落内の公安維持と「悪風改善」にあたらせた。本研究は、この部落事務員が、同時に方面委員でもあったことを突き止め、その活動内容と特徴をそれぞれ明らかにした。 まず、部落事務員=方面警察官の活動内容については、主として(1)貯金奨励と(2)就学督励・子供の組織化の2点としてまとめることができる。これらは実は、大正7年の大阪府方面委員制度設置以前から警察が得意としていた分野であり、その経験を活かした活動であった。 次に、部落事務員=方面警察官の活動内容については、(1)各方面の中心として方面活動を推進する、もしくは休眠状態の方面での活動をカバーする、(2)他方面の委員を兼任するなど、活動領域が広域であること、(3)各方面の代表者=常務委員が集まる会合に常時出席する(ただし、発言せず)、などをあげることができ、特に(2)、(3)は他の一般方面委員にはみられない特徴であると指摘できる。 以上の部落事務員=方面警察官の活動のほかに、今年度は大阪市内の部落対策事業と連動した泉北の被差別部落である南王子村における部落改善事業についても検討した。具体的には、南王子保育院(大正5年5月27日設立)について、以下のことを明らかにした。南王子保育院事業は、(1)曾根崎警察署による部落改善事業と共通する点があること、(2)具体的には日露戦後に静岡市で設立された社団法人救護会という団体の付属事業として実施されたこと、(3)貯金奨励事業を行っていたこと、(4)曾根崎署事業と異なる点は、就学督励事業を実施していないこと、などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた資料調査もほぼ達成し、研究成果の公開も順調に進んでいる。また、当初予定していた大阪市内およびその周辺地域だけでなく、泉北地域(現和泉市域)における警察社会事業をも検討対象とすることができ、それらとの比較で大阪市域での社会事業の特質を析出しうる可能性も生まれた。
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今後の研究の推進方策 |
創設期特有の方面活動の特徴についてほぼ明らかになったので、創設期とそれ以後の方面活動を比較し、それぞれの特徴を析出したい。同制度が「形成・普及期」から「確立・安定期」に入る昭和3年(1928)頃を境にして、それ以前と以後の活動を比較し、各々の特徴を明らかにし、部落対策としての性格がどのような点にあらわれるか探りたい。毎年出版された方面委員の活動報告書である『大阪府方面委員事業年報』に掲載された取扱救護件数の推移にも注意したい。
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