研究分担者 |
澤田 英三 安田女子大学, その他部局等, 教授 (00215914)
坂元 一光 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20150386)
濱田 裕子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60285541)
佐々木 玲仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70411121)
藤枝 守 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (80346858)
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研究実績の概要 |
「臨床の知」として位置づけられてきたフィールドワークについて,「場そのものが観察者に現れてくる」過程を描き出す事が本研究の狙いであった。26 年度は,目指される「臨場」の状態について,身体知に関連する先行理論を整理し概念・用 語を整理するとともに,熟練者が習得している現場の身体知を集約し,それを行動的特性で捉え られるような「インデックス」を抽出する事を目的として、異分野の分担者が各自の領域における熟達過程のインデックスと考える現象を持ち寄り、協議した。2回の共同研究会において、伝統芸能の現地調査における場への入り方、漁業コミュニティにおいて研究者の居場所が出来ていく過程、看護実習の現場において初学者が取りがちな行動的な特徴、現代音楽の「聴く」事の深まりをめざすワークショップにおいて生起する「その場」への反応、臨床のカンファレンスにおける初学者の「分からなさ」の現れ方、祭礼のフィールドワークにおける身体水準での変化の知覚とその言語化、といった領域個別の現象の中から、「臨場」という概念がどのような状態や段階なのか、そして身体知としての「臨場の知」を扱うための一連の用語系を整理した。特に熟達化の過程に関わる「熟達者・熟練者」」「初学者」、「新参者」「初期状態」という語彙を関係づけ、さらに本研究が大学での教育過程において行われるフィールドワーク実習および各領域の専門過程の実習を前提にしている事から、「教師・学生」という軸における変化を追跡する事が認識された。今後は、これらの軸上に初心者、初期過程、 熟練者の身体知の現れをインデックスとして抽出する方向で課題整理を行う。
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今後の研究の推進方策 |
27 年度は,フィールドへの参入過程についての分析を行う。観察者のポジション変化という観 点から参入の段階的進行に関する仮説を整理し,短期的な現場参入の場を実験的に設けながら, 参入の促進要因と阻害要因を分析する。また,参入の一連の段階的変化をモデル化する。 具体的にには、理論研究と実証研究について下記を行う。 1)参入の段階的進行の仮説整理(理論的研究) :フィールドワークに関する諸研究を整理すると同時に,Lewin(1945)のトポロジー心理学における場の概念を援用した感受性訓練の方法論や,フィールドエントリーに関するこれまでの知見 (南・澤田,2001)をもとに,場の中での観察者のポジション変化という観点から,前年度の研究で明らかにされたインデックスの整理結果も参考にしながら,参入過程の進行に関する仮説を提 示する。 2)参入過程の条件分析: 前年度の用語系の整理と熟練者の身体知の集約の成果に基づいて,「参与しつつの観察」のプロセスの分析と事例的な仮説検証を行う。各分担者の個別領域において、場への参入の初期状態と準標準状態とではどのような経験上の違いがあるか,さらにその進度・深度を規定する条件は何かを探る。個別領域ごとに新規参入 者の初期状態の把握と評価を行い,場になじんでいくケースと参入に抵抗が生じるケースの相互 比較を通して参入の促進要因と阻害要因の仮説を導出する。また,一連の参入過程について,その時間進行に伴う段階的変化について,その典型的な過程をモデル化する。
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