研究課題/領域番号 |
26285146
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
南 博文 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20192362)
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研究分担者 |
澤田 英三 安田女子大学, その他部局等, 教授 (00215914)
坂元 一光 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20150386)
濱田 裕子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60285541)
佐々木 玲仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70411121)
藤枝 守 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (80346858)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 参与しつつの観察 / フィールドワーク / 身体知 / フィールドエントリー / 初期過程 / 場への参入の深度 / 指標 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、1)理論研究および2)参入過程の条件分析の2つの課題群に関して、個別研究を進行し、同時に4回の研究会を実施して、研究チーム間の連携の促進を行った。その結果、参与しつつの観察の過程における場への進入の深度の指標を、5つの課題領域において明らかにし、それを統合する総合的な観点を整理した。それらは以下の観点である。 (1)居場所の安定性:フィールド内に自分らしくあれる場ができ、そこでの人間関係の中で自己の立ち位置が見えるようになる過程。 (2)身体化された場へのなじみ:特に病院などの周囲とは隔離された施設において、現場での暗黙の動き方、居方などのルールを知らない事から来る逸脱を徐々に脱して、自然とそこの流儀に従えるようになる過程。 (3)声を聞き取る背景:人間の話す声においても、また場にある全体的な「響き」においても、こちらの観念で受け取るのではなく、あちらの側の声を聞き取れる背景が備わっていく過程。 以上の側面が、各領域の固有なものなのか、あるいは領域を横断するフィールドに入っていく深度の一般化できる指標なのかについては、今後の検討が必要である。フィールドワーカーと看護や心理臨床などの社会実践としてのプラクティスとなっている現場での初学者とでは、初期過程の意味が異なる事も議論され、熟達者、新参者、初学者の関係と、それらを通した「初期」の様相を体系化できる可能性についても議論された。 来年度には、指標の整理を行うにあたって、以上の結果を踏まえて、初期過程の進行と深度を領域横断的に捉える研究の総合化を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、都市、看護、心理臨床、身体技法の伝承、音楽の5つの場において、特に現場への参入の初期過程における進入の深度を表す指標を整理する用語を確立し、同時にフィールドへのエントリーの進展についてのモデルを提出する事を目標とした。個別研究の成果に基づいて、5領域を横断する指標の整理がなされ、また場への進入の過程についてのモデルを概括的に呈示する事が出来たので、当初の計画に対して、「おおむね順調に進展している」と判定した。モデルの精度等については、まだ課題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度までに整理された指標に基づいて、3~4ヶ月程度のフィールドエントリーの過程で、場への進入が進む場合と、進みにくい場合とにおいて、どのような条件の違いがあるかを、5つの領域で明らかにするアクションリサーチの実施を中心にして、領域間の共通認識を高める討議を中心に行う。これらを整理した上で、フィールドワークの初期過程に関する理論的展望をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査と校務が重なったため、助成金を一部使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は引き続き調査とワークショップ、報告書作成のために助成金を使用する。
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