研究課題/領域番号 |
26285150
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 伸一 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70134335)
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研究分担者 |
Manalo Emmanuel 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30580386)
植阪 友理 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (60610219)
深谷 達史 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70724227)
瀬尾 美紀子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90431775)
鈴木 雅之 昭和女子大学, 人間社会学部, 助教 (00708703)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 失敗活用 / 実践研究 / 基礎研究 / 心理学的検討 |
研究実績の概要 |
近年、失敗を活用することの重要性が社会的に高く認知されるようになってきている。学習においても「いかにして失敗を活かすのか」は重要である。その一方で、「失敗は恥ずかしいことで見たくない」といった具合に、子ども達は必ずしも失敗をポジティブには捉えておらず、そのことが学業を阻害している。「失敗を上手に活用できる学習者の育成」は実践・研究の両面から意義のある問いである。よって、失敗観の構造およびその文化差の検討、失敗経験による動機づけ低下の予防法、失敗を活用できる学習者を育成するための指導法、失敗を生かした指導法開発等を実践・基礎の両面から行っている。 本プロジェクトでは、1、2年目には、基礎研究に重点を置き、3、4年目には実践研究に重点を行う計画になっている。2年目の本年度は、基礎研究に重点を置きつつも、実践研究についても積極的に行った。基礎研究の内容としては、以下のような研究を行った。例えば、学生が答え合わせをどのように行っているのか、特に解説をどのくらい丁寧に見ているのかという点について、eye-trackerを用いた研究を行い、必ずしも十分な振り返りを行えていない実態を明らかにした(e.g., 鈴木、2016)。また、研究代表者、市川伸一の学生である柴は、間違いから学び取る学習方略である教訓帰納に着目し、実際に中学生に問題を与え、どのような教訓を引き出すのかの質の分析と質に影響する要因を明らかにした。この結果、生徒の学習観や指導経験が影響を与えている可能性が示唆された。これらの研究成果を踏まえて、3月12日にシンポジウムを行い、全国から70名ほどの参加者とともに活発に議論を行った。実践研究としては、例えば植阪が中学校において、教訓帰納の質を高める働きかけを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の重点テーマである基礎研究のみならず、実践研究も行っている。また、1年目に行った実践の論文化を平行して進めており、着実に成果を上げていると捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
失敗を教育に生かすということを共通のテーマとしながら、本研究では以下の4つの問いを検討している。(1) 失敗観の構造を解明し、それらの形成要因および学習行動への影響を検討する、(2) 失敗経験による動機づけの低下を防ぎ、効果的な対処行動につなげるための方法を検討する、(3) 失敗への帰属の仕方や、失敗の活かし方の文化差についても検討する、(4) 失敗を活用できる学習者を育成する指導法と、失敗を生かした指導法についての実践研究を行う。 3年目の本年度は、基礎研究としてまず、失敗の学習促進メカニズムの解明にかかわる基礎研究として開発した、失敗観尺度の国際比較を行い、学習観の構造や失敗の帰属の仕方に文化差が見られるのかについても検討する。さらに、失敗時の親のかかわり方の影響や、教師は失敗を授業改善にどのように生かしているのかについてもあわせて検討する予定である。また、実践研究として、教訓帰納と呼ばれる失敗を活用した方略の実践の程度について、広く実態調査を行った上で、量や質の向上を目指す実践研究に取り組む予定である。
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