研究課題/領域番号 |
26285152
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
日野林 俊彦 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80156611)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達加速 / ヘテロクロニー / 初潮 / 思春期 |
研究実績の概要 |
年度前半は、今回の研究の比較資料となる平成23年2月に実施した第13回の全国初潮調査の結果45,665人の資料を中心に分析した。主として、初潮年齢の、児童・生徒の大人になったらなりたいもの(職業的同一性に関わる質問)、および女子に生まれてよかったか(性別受容に関わる質問)との関係を分析した。 女子児童・生徒は、思春期、言い換えれば初潮の時期と同期する時期に、保育士や幼稚園の先生といった幼児に関わる職業が一番人気となった。これは、先行研究で示されている、女性の乳幼児の選好傾向のピークが思春期にあることを示し、霊長類のアロマザリングと類似現象の可能性が示された。この乳幼児の選好傾向は、初潮の時期と関係し、中学3年生の分析では、早熟傾向のものは選好比率が低いことが示された。同様に性別受容においても、早熟傾向は否定的に関係することが示され、いわやる発達加速が女性心理に与える影響が示された。 年度後半では、第14回全国初潮調査の準備と発送、回収を行った。まず調査項目を上記平成23年実施の第13回全国初潮調査との比較を可能にするため、同一のものとした。初潮の時期のほかに、性別受容、朝食習慣、調査前夜の睡眠時間、興味・関心と将来なりたいものを尋ねた。調査対象校6880校を全国から無作為抽出し、依頼状、これまでの調査結果、個人調査票とともに1月末に郵送し、2月中の実施を依頼した。平成27年4月15日現在47都道府県の小・中学校1091校から返送されており、3万人を超える協力者を確保したと思われる。過去の回収学校数からの推測では、最終的には4万人前後の個人資料となる予定である。 現在、返送された1091校の学校単位の資料を都道府県別に分類作業中であり、今年度の集計・分析の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の中核となる第14回全国調査を平成27年2月に実施することができ、日本全国47都道府県から、1000校を超える小・中学校の協力があり、おそらく40,000人以上の個人調査表を回収できたため、おおむね順調に進展していると判断している。 日本全体の女子思春期の傾向を分析でき、従来の調査と比較可能な調査資料が回収できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
回収資料の整理・入力、4月からは、まず回収された1000校分以上の資料を都道府県別に分類作業を行う。さらに回収校毎に調査票の整理を行い、パーソナルコンピュータへの入力準備をする。平成27年2月調査の各個人調査表の内容をパーソナルコンピュータへ入力しデータベース化する。データベース化した資料の統計処理を行い、各種基本データを確認する。 さらに平成20年、23年の調査と平成27年調査の3調査を比較することにより、小学校4年生から中学校3年生の横断的変化と各学年、調査間隔の4年間の変化を分析するとともに、小学校4年生から中学校2年生への移行、小学校5年生から中学校3年生への移行、というコホート分析を重層的に実施する。平成27年の調査結果と平成20年および23年結果との比較を進め、報告書を作成する。過去の累積調査結果との比較研究も行う。 1.日本の平均初潮年齢の推測と現状、平均初潮年齢の推定に際し、Probit法を中心に回帰分析を行い、最適な方法を確認する。必要があれば、過去の調査にさかのぼり、統一的な計算方法により再計算を実施する。 2.47都道府県および各種の平均初潮年齢を推測し、早熟県と晩熟県の比較により、生活史理論における発達における資源間のトレードオフ関係を分析する。 3.付加項目との相関関係により、性成熟の至近的原因を分析するとともに、性成熟と思春期心理の関係性を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中核となる調査が、2月と年度末になり、回収整理の依頼が困難であり人件費・謝金の使用が困難であったことと、調査準備および日常業務が多忙になり、学会等の参加が予定通りできなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
回収した調査表の整理、4万人前後の個人資料をコンピュータ入力作業・データベース構築に人件費・謝金が必要となる。 また、成果発表および分析の視点となるような資料を収集するため、学会等参加し、資料収集費用として使用する計画である。
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