研究課題/領域番号 |
26285155
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松井 三枝 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (70209485)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 認知機能改善療法 / 記憶 / グループアプローチ / 記憶方略 / 脳機能 / 神経可塑性 / 神経心理機能 |
研究実績の概要 |
統合失調症のための認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy: CRT)は「認知過程(注意、記憶、実行機能、社会的認知ないしメタ認知)の持続と般化をともなった改善を目指す行動的トレーニングに基づいた介入」と定義されるが、我が国ではCRTの効果研究はまだ十分にあるとはいえない。本研究では日本人統合失調症患者のためのCRTの効果を検証することである。この際、認知機能障害の改善可能性の検討のために、臨床症状、神経心理機能、日常生活機能の各側面の評価とともに、脳画像および脳由来神経栄養因子を指標として神経可塑性のレベルについても検討する。本研究では、展望記憶,注意,言語記憶および問題解決(認知的柔軟性)のトレーニングを,4~6名の患者と2名以上のスタッフで構成するグループ・アプローチで行うCRTを実施する。平成26年度は治療マニュアルおよび患者用ワークブックとして,Twamleyら(2012)のCompensatory Cognitive Trainingをもとに,日本人に合わせて修正したものを完成させることができた。本CRTは,代償的方略の練習による習慣化によって,認知機能への負荷を減らしたり,認知機能障害を巧みにかわすことに焦点づけしている。介入頻度は週1回2時間で、全12回(約3ヶ月間)としている。このための介入者のトレーニングを行い、効果研究のためのグループを大学病院で開始することができた。また、効果の検討のためNIRSによる脳機能測定およびBDNF測定の基礎的検討が整い、実施を開始することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者の配置が予定より遅れたが、効果研究の導入及び測定法の確立は行なうことができたので、初年度の目標は達成されており、軌道に乗せることはできた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、統制群と介入群(CRT群)を設け、以下の手順で無作為比較統制試験を実施に向けての開始を行なう。1.患者の選択を各病院の精神科医に依頼する。2.候補となった患者に研究についての説明を、研究の趣旨に同意を得られた患者にのみ実際の登録を行う。3.登録された患者をCRT群と統制群に無作為にふりわける。4.介入前の評価:臨床症状、神経心理機能および日常生活機能について評価を実施する。また、記憶課題遂行時のNIRSによる脳機能の評価も行う。採血を行なう。5.CRT実施:グループ・アプローチで1回2時間毎週12セッション(約3カ月)実施する。ファシリテーター1名とコ・ファシリテーター2名程度のスタッフにより進められる。6.介入後の評価:介入前に行った4の評価を各患者に再び実施する。他方、評価したNIRSとBDNFの解析を進めてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究のためにはこの研究に専心できるポスドク研究者を年度初めから雇用予定としており、主としてそのための人件費を予算に充てていました。しかしながら、予定者の都合で赴任が年末となったため、人件費がずれ込むことになりました。また、博士課程の大学院生が協力研究者として2014年度の途中まで参加しておりましが、本人の都合により年度途中で休学されたため、そのための人件費もずれ込むことになりました。
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次年度使用額の使用計画 |
主として、次年度からの持ち越し分と次年度分を合わせた基金は、本研究に専心する研究員の人件費および新たな研究協力者の謝金として使用する予定といたします。
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