研究課題/領域番号 |
26285165
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (20293847)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 視知覚 / MRI / 心理物理学 / 計算モデル / 運動視 |
研究実績の概要 |
研究計画は大きく分けて3つの課題からなっている. 課題1はオプティカルフロー処理に関わる脳機能の解明である.前年度に引き続き,機能的MRIによって同定された運動視関連部位を結ぶ白質内繊維束を拡散強調画像法によって推定する研究が進展した.前年度に引き続き,大学院生(上崎麻衣子)の協力により,頭頂近辺の視覚・体性感覚連合領域と,側頭に近く視覚的運動と前庭感覚を処理するPIC/PIVC野を結ぶ大きな繊維束の同定に成功し,SPISという仮称を与えたが,本年度は対象の被験者を増やし,LIFE法を用いた検証をより確かにするためのデータ解析が進展し,論文執筆まであと一歩の段階に到達した. 課題2は静止画が動いて見える錯視の数理モデルの構築をめざす.研究協力者のvan Tonder博士により,計算機シミュレーション実験を行ってきたが,成功の見込みとともに問題点が明らかとなった.最終年度に向けて修正をはかり,成果としてまとめる準備を進めている.また,実世界での錯覚の検討ため写真撮影と分析の準備を行いつつある. 課題3は動き情報が色,明るさ知覚に与える影響の解明を目指している.本年度は明るさの対比現象における奥行き情報の関与に関する成果を国際学会で報告し,さらに動きの情報を含めた理論化のための情報を収集した.また,関連して,明るさだけでなく運動刺激の時空間変化情報が速度知覚に与える影響を調べる心理物理実験を進めている. 最後に,次年度に機能的MRI研究を行うことを目指し,機械学習モデル(SVNなど)を用いたマルチボクセル解析技術を習得するための英国におけるワークショップに参加した.そこでソフトウェアの使い方を学び,協力者との関係を構築するなど,今後の発展にむけた足がかりをえることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げた3つの研究課題は,それぞれ若干の修正を経て順調に推移しており,このまま進むことができれば最終年度には論文として成果発表を目指すことができる状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標であるそれぞれの課題について,実験研究を進めながら成果発表を目指す.得られた成果により,さらに検討すべき課題が浮かび上がってきているが,それらは本研究の枠内で扱うには時間・資金両面で不足するので,新たに研究bんたんしゃを加えて次期研究プロジェクトとして申請することを考えている. 当初計画にあげた研究内容は概ね順調に進んでいるが,若干修正をはかるべき部分もある.特に,明るさ知覚と運動知覚の統合モデルの構築は遅れているが,それは,関連する心理物理学的知見として速度知覚や位置知覚の問題を取り込むことを考えているからで,当初の目標とは若干ずれるにしても,計画時に劣らない有益な研究成果を得ることができると考えている. 最終年度に国外の協力者も含めた成果報告のワークショップを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験研究に用いるMRI施設の使用料徴収開始が予定より遅れ,27年度は徴収されないことになったため余剰金が生じた.近年の研究動向に合わせてデータ解析手法を見直し,新たな手法を習得することを優先した.また,研究分担者が退職のため分担金として予算を使えなくなったことも使用額が減少した理由の一つである.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年2月の英国出張によって問題が解決したので,28年度にはMRI実験研究をより充実させる計画を立てており,そのために必要となる資金として充当する.元研究分担者であった人は研究協力者として研究の遂行に重要な役割を果たしており,次年度はさらに研究の進展が見込まれるため,そのための資金としても活用する.また,当初申請額より減額されたため最終年度の成果発表会の規模を縮小せざるを得ない状況であったが,その点を見直すこともできる.
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