研究課題/領域番号 |
26285166
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ニホンザル / 毛づくろい / 親和関係 / トクモンキー / ゴリラ / 長期継続記録 |
研究実績の概要 |
勝山ニホンザル集団(岡山県真庭)において、オトナメスの毛づくろい関係、敵対的敵関係、順位関係の関する資料収集を、昨年度同様、実施した。但し、集団の餌場入場が例年になく少なく、予定よりもデータ量が少なくなった。2016年度に、28歳の高齢メスや22歳の高齢メスが集団から姿が消え(死亡と推測)、これらの個体と親和関係にあったメスたちが新しくどのような個体と親和関係を構築するのかなどについての事例研究のためのデータは不十分ながら収集できた。さらに、2頭間の毛づくろいだけでなく、3頭間の毛づくろいのデータ収集を行いつつ、これまでに収集した3頭毛づくろいの詳細な分析結果を基に、国際霊長類学会大会(シカゴ、2016年7月開催)で発表した。3頭毛づくろいは、これまでの霊長類研究では全く分析されておらず、注目を受けた。特に、1頭のメスに対して2頭のメスで毛づくろいする場合、毛づくろいをする2頭の血縁関係が通常の毛づくろい関係にあるメスたちの血縁度よりも有意に高い傾向があった。つまり、2頭が一緒になって他の個体を毛づくろいする場合に、親和的な関係がないと、共同作業ができないということが明らかになった。 ニホンザルと同じマカカ属でありながら、寛容性がとりわけ高いことで知られているトクモンキーとボンネントモンキーの集団をときわ動物園(山口県宇部市)で、予備観察を開始した。順位関係、毛づくろい関係、近接関係などを、個体識別しながら記録した。これらの種でのニホンザルレベルでの詳細な研究は皆無に近く、比較の観点からも、これらの集団で観察を展開すること重要性を確認した。 飼育ゴリラ集団(サンディエゴ、アメリカ)での1997年から記録を続けている放飼場での近接関係のデータと動物舎内での同室率に関するデータ整理などを開始、内と外での社会関係の長期資料の分析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
勝山ニホンザル集団での行動観察、及び資料整理がほぼ予定通りに進行中であり、さらに、追加的に、ニホンザルの近縁種であるトクモンキーとボンネントモンキーの資料収集の可能性を確認できた。さらに、代表者が20年近く継続している飼育ゴリラ集団での放飼場と動物舎内の近接関係の分析も開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに行ってきたことをそのまま展開しながら、適宜新しい試みを追加する。すなわち、勝山ニホンザル集団での行動資料収集を進めながら、淡路島集団、嵐山集団での行動資料の収集を適宜実施すること、さらに、トクモンキーボンネントモンキーの2種のマカカ属の飼育集団も観察すること、そして、すでに継続している飼育ゴリラ集団での観察も行うことが、今後の研究展開である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の勝山ニホンザル集団での行動観察が、集団の餌場入場率の低下で十分に出張できなかったこと、予定していたサンディエゴでのゴリラ集団の観察が実施できなかったこと(但し、資料整理は実施)により、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度においては、勝山ニホンザル集団だけでなく、飼育集団のボンネントモンキー、トクモンキーの観察、ゴリラ集団の行動観察、さらに、ニホンザルの淡路島集団、嵐山集団での観察などを、代表者及び、協力者により実施するため、経費は順調に執行できると予定している。
|