申請者が10年以上にわたって観察を続けている勝山ニホンザル集団(岡山県、真庭市、集団の個体数、2018年9月末時点で148頭)で、本年度も、オトナの毛づくろいをこれまで同様の方法で、記録した。同時に、本研究期間以前から収集している毛づくろいデータの解析を行った。特に、オトナメスが他のメスが生んだ子ザルを養子に迎えた場合の行動について、詳細な分析を行った。特に、これまでニホンザルでは報告のなかった1歳を過ぎてからの子ザルを養子として迎えた高齢期直前のオトナメスの「養子の母ザルとの毛づくろい関係」、「養子を迎えてからの他個体との毛づくろい関係」を分析した。また、昨年度に解析した第1位オスになる前後のオスの毛づくろい関係に関する7事例を、第27回国際霊長類学会大会(ケニア・ナイロビ・2018年7月)に発表し、参加した研究者との建設的な議論に発展した。また、通常はニホンザルの毛づくろいは2頭で行われるが、3頭が同時に毛づくろいすることもある。この珍しい3頭毛づくろいに参加している個体の社会関係を分析し、英語論文として完成させた。2019年4月に国際雑誌への投稿を予定している。 嵐山ニホンザル集団(京都市)でも、補足的に観察を行い、毛づくろいの持続時間が、勝山集団に比べると、長い傾向になることが確認された。その理由として、勝山集団では、毛づくろいペアの優位メスの子ザルが2頭に関わることで、劣位メスが毛づくろいをやめる傾向があることが示唆された。 飼育ゴリラ集団(カリフォルニア州・サンデイエゴ・サンディエゴサファリパーク)での継続観察を行い、61歳の高齢メス(飼育下で、当時世界第2位の高齢メス)の死亡後のメンバーの近接関係を記録し、メンバー間の近接関係がやや少なくなる傾向が生じているのが分かった。
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