研究課題
本研究では、顔認知のばらつきのメカニズムとその形成過程を、異文化間で比較する試みを行う。特に「先天性(発達性)相貌失認」に至る顔認知の歪みについて様々な手法で検討する。本年度はこのテーマの中でも先天的に問題のある「発達障害」を対象とした研究に専念した。本申請の目的のひとつに、生まれつき顔を見ることが苦手な「先天性(発達性)相貌失認」と、顔認知が人並み以上に優れたSuper-Recognizerの存在の解明があり、そのテストを開発することと、顔認知能力のばらつきの発達を検討する実験を行った。研究では、小児の摂食障害を対象とした実験を行うことにより、顔認知脳力のばらつきを調べ、さらに乳児を対象として視線と顔との効果を検討した。ばらつきを調べる実験では、摂食障害の女児を対象に、自己顔と他者顔への反応から社会性のばらつきの違いを検討する試みを行った。実験では15名の平均14歳の摂食障害の女児と15名の健常女児を被験者とし、近赤外分光法(fNIRS)を用い、顔反応領域周辺の活動を、自己顔と他者顔観察時で比較した。その結果、健常児では自己顔と比べ他者顔の連続提示に馴化を起こすことが判明した一方で、摂食障害児では自己顔も他者顔も連続提示にもかかわらず順応の反応がみられず、高い活動が続くことが判明した。過敏な社会性により、顔への順応が起こらずに、過敏な反応が続くことが判明し、これも顔認知のばらつきのひとつであることが判明した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、学術論文(国際誌)が5本、海外での発表5本、国内での発表14本を行った。Current Biologyのように広い領域にインパクトのある成果を示す雑誌に成果が発表できたことは、成果として大きいと考える。また、一般書(新書)で顔にかかわる解説をしめすことができ、さらに去年に引き続き東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所とともに顔と身体表現に関するシンポジウムを企画し、報告書にまとめる作業を行っている。一般向けの本を出したことやシンポジウムから、研究成果を一般向けに広める試みができ、期待される成果をあげることができたと考える。
引き続き論文執筆作業を行い、一般向け書物の執筆と、アウトリーチ活動として、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所とともに行った顔と身体表現に関するシンポジウムを毎年企画し、報告書にまとめる作業を行う予定でいる。次年度の実験のために異文化比較研究の準備を行っている。
年度を越して採択される予定の論文があるため。
年度を越して採択される予定の論文があり、論文掲載料や抜き刷り代などに使用する必要がある。実験は年度を越えて行っているので年度を越した使用が必要である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
Current Biology
巻: 25(24) ページ: 3209-3212
PLoS ONE
巻: 10(9) ページ: e0136965
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巻: 10(7) ページ: e0132050:1-12
i-Perception
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doi:10.1068/i0681
Journal of Vision
巻: 15(1) ページ: 25,1-10