研究課題/領域番号 |
26285168
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河原 純一郎 北海道大学, 文学研究科, 特任准教授 (30322241)
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研究分担者 |
木原 健 鹿児島大学, 工学部, 助教 (30379044)
中尾 敬 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40432702)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 注意 / 行動意図 |
研究実績の概要 |
H27年度は,意図的行動実施中に作業記憶が別の課題で占有されている際の作業記憶内容の書き換え現象について検証した。実験の結果,作業記憶が占有されていることで新たな入力が作業記憶ないように置き換わる,resulting set configurationという現象が生じることを確認し,これが刺激次元間でも生じることを報告した。加えて,意図的行動が作用する注意成分を特定するため,注意の働きを検討可能な6つの課題(高速逐次視覚呈示課題,注意補足課題,視覚探索課題,オブジェクト置き換え課題,メタコントラストマスキング課題,ワーキングメモリ課題)を用いて,自動的に刺激群が呈示される場合と比較して,意図的行動によって刺激群が呈示された場合に課題成績がどのように変化するのかを調べた。また,意図的行動生成時の瞳孔径計測プロトコルを確立するため、検討が先行していた高速逐次視覚呈示課題を用いて,意図的行動と瞳孔径変化の関係を詳細に分析した。一方,脳活動計測については,刺激呈示前の脳活動解析手法を確立した。写真刺激の自己関連性判断を行った際の脳波解析にこの手法を適用することで,刺激呈示前-500 msのアルファ波のパワーが刺激の自己関連性判断を予測することを示した。さらに,このアルファ波のパワーは,前部帯状回のグルタミン酸濃度と相関することも明らかとなった。前部帯状回は刺激の自己関連性の処理と関連することが知られていることから,この結果は刺激呈示前のアルファ波が刺激の自己関連性を予測するという結果と整合するものといえる。これらの結果から本研究課題において確立した脳活動解析手法が,刺激呈示前の脳活動と課題のパフォーマンスとの関連を検討する際に有用であることが示された。この成果はSocial Neuroscienceで誌上発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者はresulting set configurationに関する実験実施,およびその報告をActa Psychologia誌に報告した。これに続いて,2つの知覚的構えが混在する事態での意図とその分割についてはThe Quarterly Journal of Experimental Psychology誌に投稿中であり,1回目の査読対応を済ませ,再投稿した。この過程で3つの追加実験を行い,その結果はresulting set configurationが生じるときに,トップダウンの知識が関与していることを突き止めた。これは従来の研究で知られていなかったことであり,その点では予定した進捗とは良い意味で異なるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であり,代表,分担者ともに連携を強めて計画を推進する。具体的には,二重課題事態での行動前,行動中の脳活動計測や作業記憶との関係に焦点を絞った実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の異動により,研究設備,被験者募集環境の再構築が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
年度後半からは研究設備,被験者募集環境が少しずつ整ってきたため,次年度は使用額を被験者費用に重点的に充てる。
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