研究課題/領域番号 |
26285169
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横井 敏郎 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40250401)
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研究分担者 |
高橋 寛人 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (10188047)
辻村 貴洋 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10546790)
安宅 仁人 酪農学園大学, 農学生命科学部, 講師 (20513675)
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20581721)
荒井 文昭 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40244404)
坪井 由実 愛知県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50115664)
西村 貴之 北翔大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60533263)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育行財政 / 教育制度 / 就学保障 / 教育委員会制度 / 早期離学 / 社会的包摂 |
研究実績の概要 |
2015年度は本科研の2年目である。 国外調査では、北米(カナダ)の早期離学の現状と支援制度の調査、および韓国の代案学校の法制度と学校運営・教育実践に関する調査を行った。 カナダ調査では、カルガリー市教育委員会の協力を得て、同市教委、公立高校、at-risk youthサポートNPO、支援ネットワーク組織、警察などを訪問し、情報を収集した。同市教委は困難な状況にある生徒を受け入れられる多様な高校の設置、教授法の見直しとサポートスタッフの配置、中退者を他機関につなぐ支援組織などを用意しており、また警察も独自の支援活動を行っている。それに加えて、高校生と中退者を支えるNPOが発達して大きな役割を果たしていることなど、カナダの早期離学の現状と対応策・制度の概要を把握することができた。 2度にわたる韓国調査では、主に代案学校を訪問し、代案学校制度とそこでの教育実践を調査した。代案学校への訪問調査では、沿革や運営体制、独自の教育実践と理念などを聞き取った。日本の代案学校研究では、韓国には代案学校法が制定され、代案学校が制度化されているとされてきたが、正確には独自法は存在せず、また代案学校にも複数の種類があること、制度外の代案学校が多数存在していることが明らかになった。 国内調査では、包摂的な教育制度・行政の取り組み事例や制度と法律を調査した。具体的には、神奈川県立田奈高校の有給職業体験プログラム「バイターン」実施プロジェクト、横浜市の生活困窮世帯小・中学生に対する学習支援等、多摩市の公立小学校における学力保障の取り組みなどである。他に、公立夜間中学校の生徒層の歴史的分析、多様な教育機会確保法案の条文の分析などを行い、包摂的な教育機会のあり方について多方面から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は大きく国外と国内に分かれる。科研前半2年間で予定していた国外調査のうち、北欧のスウェーデン、北米のカナダ、アジアの韓国の調査を実施し、各国の法制や組織を概観することができた。国内についても法律、制度、事業、実践について各分担者・連携研究者等が調査・研究を進め、本科研をまとめるための構成要素が明確になってきた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、教育からの排除に対抗する包摂的な教育制度・行政システムと教育政策のあり方を、国際比較を取り入れて検討するものである。今年度も各国の早期離学対策や若者支援等の包摂的な教育制度・施策について研究を進めるが、国内調査・国外調査をより本格的に行い、最終年度(来年度)のまとめに引き継げるよう作業を進める。 国外調査では引き続き、カナダ(アルバータ州)と韓国(ソウル市・代案学校)の調査を行うほか、フィンランド(ヘルシンキ市)とデンマーク(コペンハーゲン・independent school)を予定している。デンマークについては長期滞在をして調査研究を行う計画を立てている。 国内調査では引き続き、困難にある高校生や高校中退者、困窮家庭小中学生への学習支援事業、低所得層地域の学校運営、義務教育未修了者等への包摂的な支援制度・活動の他、教育委員会と首長・首長部局との関係、教育あるいは教育・子育て・若者支援実践と政治の関係についての考察も進めたい。 最終年度に調査研究のまとめを行い、成果物とできるよう、今年度のうちに執筆の構成と分担、今後の各担当者の作業課題の明確化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
包摂的な教育制度として韓国で積極的な展開が見られるので、韓国を調査対象に加えることとした。研究協力者の予定に合わせるため、今年度後半に急遽、韓国調査を2回実施することとなった。そこで、予定していたスウェーデンとデンマークの調査を遅らせることとした。またフィンランドは調査準備に時間を要したため、調査を次年度に回した。これら複数の国外調査を次年度実施としたことで予算に残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に実施できなかった国外調査を実施する。フィンランドの他に、特にデンマークについては長期滞在をして調査研究を実施する計画であり、昨年度残額はこれらに使用される。
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