本年度は6月9日に鳥山淳氏(琉球大学)を招いて「奄美調査で収集した資料のデジタル化についての打合せ」をおこなったほか、「戦後東アジアにおける植民地主義と冷戦」をテーマとした研究会を京都大学でおこない、鳥山氏に「奄美大島における基地と土地」というテーマでご報告いただいた。この時に鳥山氏はあわせて中之島図書館で「沖縄・奄美出身者に関する資料調査」をおこなった。また当初参加予定だった小川正人氏(北海道立博物館)は職場の都合で参加を断念した。 1月27日にはやはり奄美調査についての打ち合わせをしたほか、「沖縄・台湾における人類学的調査と植民地主義」というテーマで板垣竜太(同志社大学)と駒込武が報告した。この時に鳥山はあわせて大阪産業労働資料館で「沖縄・奄美出身者に関する資料調査」をおこなった。 こうした準備状況をふまえて3月14日に喜界島の喜界町図書館で近代奄美史関係の資料調査でフィールドワークをおこない、15日に奄美大島教育会館で「島尾敏雄の帝国と周縁」をめぐる研究会を開催して冨山一郎(同志社大学)と鳥山淳(琉球大学)が報告し、16日に奄美大島教育会館で戦後奄美教育運動史関係の資料調査をおこなった。また当初参加予定だった小川正人氏は新型コロナウイルス感染症拡大への対応のために参加を断念することになった。 こうした共同研究を通じて、島尾敏雄の南島論が一方で既存の国家史を越える方向性を見せながら、他方で植民地主義的な認識枠組みに「南島弧」と呼ばれる島々を再び囲い込む性格を備えていたことが明らかになった。その研究成果の一部は、駒込武編『生活綴方で編む戦後世界―<越境>と<冷戦>の1950年代』として岩波書店より刊行予定である。
|