本研究の課題は、冷戦と植民地主義に着目して、戦後東アジア諸地域における教育のあり方を比較史的に分析することであった。本研究の一つの柱は、1950年代に台湾、中国、朝鮮の子どもたちが書いた作文を集めて出版した『世界の子ども 中国朝鮮篇』(1955年)の分析である。分析の結果として、作文集の編集過程も内容も冷戦体制の影響を色濃く受けており、脱植民地化への志向が作文に表現されるのは稀だったことを指摘した。もう一つの柱は、日本教職員組合奄美地区支部の資料の分析である。戦後米軍統治下におかれた奄美の復帰運動には、沖縄における復帰運動と同様、戦前以来の植民地主義を問い直す傾向は弱かったことを解明した。
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